ECサイトを成長させるには、売上を伸ばすだけでなく、広告費や運営コストなどの投資に対して、どれだけ利益を生み出せているかを把握することが重要です。
本記事では、ECにおけるROIの概要や計算方法、ROIを改善するための施策10選を紹介します。
広告費を増やしているものの利益率が伸びない方や、限られた予算をどのマーケティング施策に配分すべきかわからない方は、ぜひ参考にしてください。

ECにおけるROIとは
ECのROI(投資利益率)とは、ECサイトの運営やマーケティング施策への投資に対して、どれだけ利益を生み出せたかを示す指標です。特に、ECマーケティング施策の費用対効果を評価する際によく用いられます。また、顧客獲得単価(CAC)などの指標と組み合わせることで、施策の効率や投資効果を総合的に評価できます。
ECのROIは、以下の計算式で算出できます。
ECのROI(%)=利益÷投資額×100
ROIが高いほど、投資額に対して効率よく利益を上げていることを意味します。一方、ROIがマイナスの場合は、投資額を上回る利益を生み出せていない状態であり、マーケティング施策や予算配分を見直す必要があります。
ECサイトのROI改善に効果的な施策10選
- ECサイトのSEOを強化する
- 広告費と広告効果を最適化する
- ファネル全体でCROを実施する
- メールマーケティングを導入する
- PRや広報戦略を立てる
- SNSでブランド認知を高め、コミュニティを構築する
- 差別化につながるコンテンツマーケティング戦略を構築する
- 販売パートナーとの提携を進める
- AR技術を活用して顧客体験を向上させる
- 顧客の声を収集し、活用する仕組みを構築する
1. ECサイトのSEOを強化する
ECサイトのSEOを適切に行うことで、検索エンジンから評価されやすくなり、検索結果を通じて見込み顧客へアプローチしやすくなります。SEOを強化することで、購入意欲の高いユーザーからの検索流入を継続的に得られるようになり、顧客獲得単価の改善やROIの向上につながります。
ECサイトのSEOを改善するには、次のような施策が効果的です。
- 関連キーワードを含めて商品説明を最適化する
- 検索ニーズに合わせたカテゴリーページを作成する
- URLやメタディスクリプションを適切に設定する
- 提携先とのコラボレーションやPR活動を通じて、質の高い被リンクの獲得につなげる
- すべてのデバイスでページが高速表示できるように最適化する
インテリア雑貨ブランドのFrancfranc(フランフラン)は、SEO対策を強化するとともに、自社でコンテンツを更新、改善できるシステムを構築しました。その結果、ブランドの世界観を維持しながら、2018年から2022年にかけてオーガニックトラフィックが約1.7倍に増加し、それに伴いEC売上も拡大しています。
2. 広告費と広告効果を最適化する
広告運用を定期的に見直さなければ、広告費に対して十分な成果を得られない可能性があります。Google広告や、LINE(ライン)、YouTube(ユーチューブ)、Instagram(インスタグラム)などのSNS広告を含む各マーケティングチャネルで、継続的な改善を行うことが売上向上には欠かせません。
A/Bテストによる広告クリエイティブの検証やターゲット層の見直し、各プラットフォームの入札戦略の最適化を行いながら、広告キャンペーンを継続的に改善しましょう。また、コンバージョン率を定期的に確認し、成果の高い広告やターゲット層へ予算を再配分することも重要です。広告効果が低下してきた場合は、顧客セグメンテーションを見直すとともに、クリエイティブアセットや広告コピーを刷新し、広告疲れを防ぐ必要があります。
3. ファネル全体でCROを実施する
CRO(コンバージョン率最適化)とは、サイト訪問から購入に至るまでのファネルを改善し、コンバージョン率を高めるための取り組みです。ユーザー体験や購入プロセスを最適化することで、既存のアクセス数のままでもコンバージョン率を高められます。その結果、同じ集客数でも、コンバージョン率の改善によって、売上の増加が期待できます。
ECサイトで実践したい主なCRO施策は以下のとおりです。
- モバイルでのチェックアウトを簡略化し、カゴ落ちを減らす
- 商品購入ボタンの近くに、口コミやレビューなどの社会的証明を配置する
- 商品画像や機能、使用方法などを詳しく掲載し、購入判断をサポートする
- 在庫数や期間限定キャンペーンを表示し、購入を後押しする
- 商品ページのボタン配置や色、コピーをA/Bテストで検証する
4. メールマーケティングを導入する
メールマーケティングは、見込み顧客や既存顧客と直接つながることができるマーケティング手法です。SNSのようにアルゴリズムの影響を受けず、自社で管理できるメールリストを活用するため、安定して顧客へ情報を届けられます。これにより、顧客との関係を構築しやすくなります。
メールマーケティングでは、売上につながる重要なタイミングを逃さず顧客へアプローチすることが重要です。たとえば、新商品の入荷案内やカゴ落ちメール、購入後のお礼メールなどを配信することで、顧客との関係を深め、リピート購入につなげられます。また、商品の使い方やお手入れ方法、活用事例などの役立つコンテンツを配信することで、顧客とのつながりを維持し、継続購入を促すことができます。
靴や日用品を販売するヒラキ株式会社は、メールマガジンの改善や1to1メール配信を継続的に実施した結果、開封率やクリック率が向上し、メール経由の受注件数は前年の約4倍に増加しました。
5. PRや広報戦略を立てる
効果的なPRや広報戦略を実施すれば、有料広告に頼らずターゲット層へアプローチできます。関連メディアの記者と良好な関係を築くことで、メディア掲載につながり、ブランドの信頼性を長期的に高められます。取材を依頼する際は、自社の商品やサービスを宣伝するのではなく、ターゲット読者が関心を持つデータやトレンドに関する情報を提供することが重要です。
現在でも大手メディアの影響力は大きいものの、ポッドキャストやニュースレター、業界専門誌なども活用することで、よりニッチなターゲット層へアプローチできます。
6. SNSでブランド認知を高め、コミュニティを構築する
近年は、SNSでの競争が激しくなり、広告費が必要になるケースが増えています。一方で、ブランドの舞台裏や顧客による開封動画など、魅力的でリアルなコンテンツは、多くの投稿の中でも注目を集めやすく、ターゲット層へリーチできます。
YouTubeショートやTikTok(ティックトック)のようなショート動画を中心としたプラットフォームでは、フォロワー数に左右されずにコンテンツが拡散される可能性があります。レコメンド機能によって、これまで接点のなかったユーザーにも動画が表示されるため、新たな顧客との接点を生み出しやすいのが特徴です。
ブランド全体のビジュアルに統一感を持たせることや、コメントやDMに迅速に対応することも重要です。また、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用やハッシュタグキャンペーンの実施も、SNSコミュニティの構築に効果的です。こうした取り組みによってブランドを目にする機会が増え、投稿への反応やシェアにもつながりやすくなります。
無印良品は、「#無印良品」などのハッシュタグを通じてUGCを積極的に活用しています。ユーザーの投稿をブランドの情報発信に取り入れることで、ファン同士の交流やブランドへの愛着を育み、SNSコミュニティの活性化につなげています。
7. 差別化につながるコンテンツマーケティング戦略を構築する
コンテンツマーケティングは、SEOを目的としたブログ記事を制作するだけでなく、顧客との信頼関係を築き、課題を解決するための戦略へと進化しています。動画やポッドキャスト、SNSで発信するハウツーコンテンツなどを通じて、自社の専門知識やノウハウを伝えることで、ブランドへの信頼を高められます。
このような普遍的なテーマを扱うエバーグリーンコンテンツは、 長期的に集客や売上に貢献できるため、費用対効果に優れており、有料広告への依存を減らすことも可能です。たとえば、「浄水器の選び方」と検索したユーザーが、自社の購入ガイドコンテンツへたどり着けば、リスティング広告を利用しなくてもオーガニック検索から継続的な流入を見込めます。
北欧、暮らしの道具店を運営する株式会社クラシコムは、ウェブ記事や動画、ポッドキャストなど多様なコンテンツを継続的に発信しています。商品の販売だけでなく、暮らしに役立つ情報を提供することでブランドへの信頼を高め、ECサイトへの集客や売上拡大につなげています。
8. 販売パートナーとの提携を進める
販売パートナーとの提携は、新たな顧客へ商品を届ける効果的な方法です。提携先が持つ顧客基盤やブランド力を活用できるため、新規顧客を獲得するための広告費を抑えながら、自社商品の販売につなげられます。たとえば、スキンケア商品を大手ドラッグストアで販売したり、ドレッシングをレストランのメニューに採用してもらったり、天然素材を使った寝具をエコ志向のマーケットプレイスで販売したりする方法があります。
販売提携を成功させるには、競合他社がどのようなブランドと協業しているかを参考にしながら、提携候補をリストアップしましょう。そのうえで、自社と競合しないブランドを選び、小規模な取り組みから始めることで、より大きな提携へ発展させやすくなります。営業活動に加え、業界イベントや展示会などを通じて、新たな販売提携につながる可能性があります。
実際に、コンビニ各社は有名飲食店とコラボ商品を展開し、双方の強みを生かした取り組みを行っています。飲食店はコンビニの全国に広がる店舗網や顧客基盤を活用することで、自店舗だけではリーチできない層にも商品を届けられ、ブランド認知の向上や新規顧客の獲得につなげています。
9. AR技術を活用して顧客体験を向上させる
拡張現実(AR)を顧客体験に取り入れることで、競合との差別化につながるショッピング体験を提供できます。AR技術を活用すれば、ECサイトでの購入前に洋服をバーチャル試着したり、家具を自宅に配置した際のイメージを確認したり、化粧品の色味をシミュレーションしたりできます。こうした体験は、オンラインショッピングの利便性を高めるだけでなく、購入前の不安を軽減し、返品率の低下にもつながります。
Shopify(ショッピファイ)にはAR機能が標準搭載されているため、手軽に没入感のある商品体験を提供できます。商品登録ページで3DモデルのデータをアップロードするだけでAR機能を利用できます。また、ShopifyアプリのSnap Wearを活用すれば、商品ページに試着ボタンを追加することが可能です。試着回数や試着経由の購入数、試着からチェックアウトまでの時間などを確認できるため、AR機能が購入行動に与える影響を把握できます。
化粧ブランドのNARSは、ファンデーションなどを試せるARのバーチャルメイクアップツール「MATCHMAKER(マッチメーカー)診断」を導入しました。これにより、コンバージョン率は300%向上し、1回当たりの平均注文品数も10%増加しました。
10. 顧客の声を収集し、活用する仕組みを構築する
市場全体のトレンドを把握することも重要ですが、実際に商品やサービスを利用するユーザーの声に耳を傾けることも欠かせません。顧客からのフィードバックは、商品の改善やチェックアウトの最適化など、売上や利益につながる課題を把握するための貴重な情報源です。
顧客満足度調査やレビュー、ソーシャルリスニングなど、複数の方法でユーザーの意見を収集できる仕組みを整えましょう。継続的にフィードバックを分析することで、ニーズの変化をいち早く把握し、商品やサービスの改善に役立てられます。
ユニクロは、商品企画に顧客の声を反映しており、寄せられたフィードバックをもとに毎シーズン商品の改良を重ねています。顧客ニーズに応える商品づくりを通じて、商品力の向上や売上拡大につなげています。
まとめ
ROIの改善は、一度の施策だけで実現できるものではありません。SEOや広告運用、顧客体験の向上、顧客との関係構築など、本記事で紹介した10の施策を組み合わせながら、継続的に改善を重ねることが重要です。自社の状況に合わせて優先度の高い施策から取り組み、データをもとに効果を検証することで、持続的な成長と収益性の向上につながるでしょう。
ROIの改善に関するよくある質問
ROIとROASの違いは?
ROIは投資額に対してどれだけ利益を生み出せたかを示す指標であるのに対し、ROAS(広告費用対効果)は広告費に対してどれだけ売上を獲得できたかを示す指標です。
ECにおけるROIの目安は?
ECにおけるROIは、業種やビジネスモデルによって異なりますが、一般的には200〜300%程度が一つの目安とされています。
ECでROIを活用するメリットは?
- マーケティング施策の費用対効果を可視化できる
- 広告費やマーケティング予算を最適化できる
- 商品や販売チャネルへの投資判断に役立つ
- データにもとづいた意思決定ができる
- ECサイト全体の収益性向上につながる




