企業や個人事業主にとって、重要な指標の一つに利益率があります。運営費を賄い、ビジネスオーナーとして収入を得るために十分な利益を確保したい人もいるでしょう。一方で、ビジネスを拡大するために従業員を雇ったり、設備や研究へ投資をしたりする場合は、さらなる利益の確保が必要になります。
この記事では、利益率の定義やその種類、計算方法について解説します。5種類の利益率の意味や改善のポイントを押さえて、事業の収益性を高める方法について理解を深めましょう。

利益率とは
利益率とは、売上に対する利益の割合を示したものです。商品やサービスの販売で得た総額を売上高と呼び、それに対して利益がどれだけの割合を占めるのかを算出します。利益率はパーセンテージで表され、数値が高いほど収益性が高いと言えます。
利益率にはさまざまな種類があり、どの利益率を分析するかによって事業の現状や改善点の探り方が異なります。

利益率の種類
利益率には以下の5つの種類があります。これらの指標は、損益計算書にも記載されるものです。
1. 売上高総利益率(粗利率)
売上高総利益率は粗利率とも呼ばれ、以下の計算式により求められます。
売上総利益は、売上高から売上原価または製造原価を差し引いた金額です。売上総利益を売上高で割ると、売上に対してどれくらいの利益を確保できているかを算出できます。原価には純粋な材料費だけでなく、仕入れにかかる費用や製造にかかるコストが含まれます。例えば原価が3,000円の服を5,000円で販売した場合、粗利は2,000円です。売上高総利益率(粗利率)は「2,000÷5,000=0.4」となり、40%であることがわかります。
売上高総利益率は業界や扱う商品によって異なり、景気の影響も受けます。そのため、同業他社と比較したり、自社の推移を観察したりするだけでなく、景気動向にも注目して総合的に分析する必要があります。
2. 売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高に対する営業の利益の割合を算出したもので、計算式は以下の通りです。
営業利益は、売上から原価だけでなく、人件費や広告宣伝費、家賃、光熱費などの販管費を差し引いた金額を指します。売上高営業利益率は売上高総利益率と異なり、商品の原価とその他の必要な費用を含めた場合の利益率を算出できるため、営業活動の採算性があるかどうかを判断したいときに役立ちます。
3. 売上高経常利益率
売上高経常利益率とは、売上高に対する経常利益の割合を指します。経常利益とは、事業主が事業活動を通して得た利益のことを指し、営業外の損益も含まれます。具体的な営業外損益には以下のようなものが含まれます。
- 配当金
- 預金利息
- 雑収入
- 融資の際の利息
- 雑損失、など
売上高経常利益率は事業主の収益力を客観的に表す指標で、以下の計算式で求められます。
例えば売上高が1,500万円で、経常利益が500万円だった場合、売上高経常利益率は「500万円(経常利益)÷1,500万円(売上高)×100」となり、33.3%であることがわかります。
4. 売上高税引前当期純利益率
売上高税引前当期純利益率は、売上高に対する税引前の当期純利益の割合を示すものです。
税引前当期純利益とは、経常利益に以下の特別利益と特別損失を加算・減算したものを指します。
特別利益
- 固定資産売却益
- 長期保有株式等の売却益
特別損失
- 固定資産の売却損失
- 自然災害や盗難、火災により生じた損失
これらの損失には住民税や事業税、法人税は含まれません。そのため、売上高税引前当期純利益は、税金控除前の利益の規模を把握できます。一方で、臨時損失・収入が含まれることから、売上高税引前当期純利益率の推移を分析する際には、その内訳にも着目する必要があるでしょう。
5. 売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は、売上高における当期純利益の割合を指し、以下の計算式で求められます。
売上高当期純利益は、税引前当期純利益から事業税や住民税、法人税といった税金を引いた金額を指します。売上高当期純利益を売上高で割ることで、事業年度の最終的な利益率を算出できます。この指標は、事業主の収益力や経営効率を示す役割があります。

業種別に見る利益率の目安
一般に、利益率の目安として売上高営業利益率や売上高経常利益率が用いられます。2023年経済産業省企業活動基本調査速報では、2022年の主要産業の売上高営業利益率と売上高経常利益率は以下の通りです。
- 売上高経常利益率:6.7%
- 売上高営業利益率:4.0%
次に、業界別にこれらの指標を見ていきます。
製造業
- 売上高経常利益率:8.7%
- 売上高営業利益率:4.9%
卸売業
- 売上高経常利益率:5.7%
- 売上高営業利益率:2.9%
小売業
- 売上高経常利益率:3.1%
- 売上高営業利益率:2.8%
さらに、2025年版中小企業白書によると、中小企業の経常利益は上昇傾向で推移しているものの、大企業と比べると伸び悩んでおり、差が拡大していることが指摘されています。中小企業は、配当金や利息収入といった営業外収益が限定的になりやすい構造があります。そのため、特に中小企業は売り上げやコスト構造の見直しといった利益率を高める改善策を講じる必要があるでしょう。

利益率の改善方法
売上を上げる
営業利益率や経常利益率の改善を目指すには、売上アップを実現することが重要です。これらの利益率を計算する際に用いる販管費は売上に関わらず発生する費用のため、売上が増加することで利益率を高められます。
マーケティング戦略を見直す
マーケティング戦略を見直すことで、より効率的に商品を販売して売上を高め、結果として利益率の改善が望めます。例えば、以下のような方法を検討してみましょう。
- 潜在顧客の掘り起こし
- CRMの導入
- ロイヤルティ向上のための施策
- 既存顧客へのメールマーケティング
- 商品・サービスのLP(ランディングページ)広告を導入する
潜在顧客の掘り起こしは新たな接点を増やす施策です。加えて、CRMの導入やロイヤリティ向上の施策は、獲得した顧客との良好な顧客関係構築を深めるのに有効です。既存顧客に対しては、メールマーケティングによるリピートの促進や、利益率の高い商品・サービスのLP広告を活用することで、効率的な売上の向上が期待できます。
販売商品やサービスを見直す
利益率の改善が見込める施策の一つに、販売商品やサービスの見直しがあります。定期的に販売価格の見直しや単価の適性化を行うことで、売上アップを目指すだけでなく販売ロスの削減にもつながるでしょう。
ターゲット顧客のニーズを把握し、商品・サービスを通して得られるメリットを洗い出すことも重要です。ニーズの高い商品の単価を高めに設定したり、商品ページのデザインを改善したりして、メリットを効果的に伝えると、売上アップにつながるでしょう。
固定費を見直す
家賃や人件費、光熱費、広告宣伝費などの固定費の見直しは、利益率の改善につながります。単に費用を削減するのではなく、無駄があると感じられるものや改善の余地がある費用のみを削減することが重要です。安易に人件費を削減したり労働環境が悪化する施策をとってしまったりすると、生産性の低下を招く恐れがあります。例えば、以下のような方法で固定費の削減が可能です。
変動費を見直す
売上に伴って変動する費用を見直すことも、利益率の改善に効果的です。EC事業を運営する場合は、利用する運送企業や3PL企業の見直しだけでなく、フルフィルメントを自社で行うか外注するかといった点も検討しましょう。さらに、在庫管理システムを見直すことも変動費の削減に有効です。
原価削減に努める
原価の削減も利益率を改善する方法の一つです。原価が減ることで粗利が増え、利益率の改善を実現できます。原価を削減するには以下のような方法が考えられます。
- 仕入れ先を見直す
- 原材料を見直す
- 製造工程を見直す
- まとめて仕入れることで原価を下げる
外注を検討する
業務の一部を外注することで利益率を改善できる場合があります。外注を活用するメリットは、高額になりやすい人件費を抑えられる点です。コア業務以外の作業を外注したり、業務効率化ツールを導入したりすることで、社内のリソースを売上や利益に直結する業務に集中させられるでしょう。
利益率分析のポイント
利益率の推移を分析する
前年度比や前年度同月比など、過去のデータからどのように利益率が推移しているか確認することが重要です。推移を分析すると、業績が変動した原因を特定しやすくなるだけでなく、今後の業績を予測することにも役立ちます。
同業他社の利益率や業界の平均値と比較する
同業他社の利益率や業界の平均値と比較・分析することで、自社の事業がどの位置にいるかを把握できます。業界平均を下回っている場合は、原価率や販管費が高くなっていないかを確認し、改善余地を探ることが重要です。反対に、平均を上回っている場合は、その要因を分析することで自社の強みを明確にできます。
他の指標と併せて分析する
利益率を分析する際は、売上高や原価率、販管費といった他の指標と照らし合わせることが重要です。例えば売上が伸びているのに利益率が下がっている場合、原価や販管費が増加していると考えられます。原価率が高い場合は、仕入れ先の変更や仕入れ条件製造コストの見直しを検討しましょう。
まとめ
利益率は、事業主にとって重要な指標の一つです。売上に対する利益の割合を示したものを利益率と呼び、数値が高いほど収益性が高いと言えます。
利益率には売上高総利益率(粗利率)、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高税引前当期純利益率、そして売上高当期純利益率の5つの種類があります。利益率の目安とされる指標は主に売上高営業利益や売上高経常利益率が用いられ、業界によって目安が異なります。
利益率を改善するためには、売上のアップと費用の削減が必要です。マーケティング戦略や販売商品、サービスの適正価格などを見直すことで、効率的な売上の向上を目指せるでしょう。家賃や人件費、光熱費といった固定費や、売上に伴い変動する配送料などの変動費の削減は、利益率の改善につながります。
利益率は事業の経営状態を正確に把握し、最適な戦略を取るためにも重要な指標です。今回の記事を参考にして利益率を算出して改善策を講じ、事業のさらなる収益化を目指しましょう。
利益率に関するよくある質問
利益率と粗利率の違いは?
利益率は、売上に対する利益の割合を示したものであるのに対し、粗利率は売上高から売上原価または製造原価を差し引いたものを指します。利益率には5つの種類があり、そのうちの一つが粗利率です。
利益率は何パーセントが理想?
利益率の理想は業種により異なりますが、一般に売上総利益率では30%以上、営業利益率は10%以上が理想とされています。
純利益率の数式は?
売上高当期純利益率の数式は、「売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高×100」です。
文:Masumi Murakami





