拡張現実(AR)は、近年、通販体験を高める技術として注目されています。実店舗のように商品を直接手に取れない通販では、サイズ感や見た目、使う場面をどう伝えるかが大切ですが、ARは、そうした課題を補う手段のひとつとして活用が広がっています。
この記事では、拡張現実(AR)の基本的な意味や種類、ECでの活用例、将来性などをわかりやすく紹介します。
拡張現実(AR)とは
拡張現実(AR)とは、現実の風景や空間に、デジタル情報を重ねて表示する技術です。たとえばスマホのカメラを通して映すと、室内に3D CGのキャラクターが登場したり、美術館の説明文が自国の言語に翻訳されたりと、現実に見えている情報を拡張することができます。
ARはゲームやエンタメ分野での印象が強い技術ですが、買い物や学習、街中の案内表示、医療、製造業など、さまざまな分野で活用されています。ECサイトや通販では、家具や家電を部屋に置いたイメージを表示したり、メガネやコスメを顔に重ねたりする機能に使われています。近年は導入コストが数万円程度まで下がり、メリットも多いため、投資収益率が比較的高い機能となりました。
なおECプラットフォームのShopify(ショッピファイ)では、Snap Wear(スナップウェア)などのバーチャル試着アプリをはじめ、サイト上にAR機能を簡単に追加できるアプリも提供しています。

拡張現実(AR)の主な種類
マーカー型AR
マーカー型ARは、目印を利用して表示するタイプです。特定の画像や写真、イラスト、文字などをカメラで認識すると、対応するARコンテンツが表示される仕組みです。目印がはっきりしているため、安定して動作しやすい点が特徴です。ポスターや商品パッケージ、店頭販促などで使われることが多く、紙や実物とデジタル情報を結びつけたい場面に向いています。
GPS型AR
GPS型ARは、スマートフォンの位置情報を利用して動作するタイプです。利用者が今どこにいるかをもとに情報を表示するため、地図サービスや道案内、位置情報と連動したゲームアプリなどに活用されています。ECサイトそのものよりも、実店舗への誘導や地域と連動したキャンペーンなどで活用しやすい種類です。
空間認識型AR
空間認識型ARは、カメラを通して現実世界の平面や奥行きを認識し、その空間に合わせてARコンテンツを表示するタイプです。家具や家電を部屋の中に置いたように見せる機能は、この種類にあたります。サイズ感や空間との相性を確認しやすいため、購入前の不安を減らすのに役立ちます。
物体認識型AR
物体認識型ARは、特定の立体物や対象物を認識して表示するタイプです。対象物をさまざまな角度から認識できるため、現実に合ったサイズ感や動きをもつコンテンツを表示しやすいのが特徴です。顔に合わせてコスメやメガネを重ねる機能も、この物体認識型ARに分類されます。
ECサイトにおけるARの活用例
家具やインテリアの試し置き
ARの活用例としてわかりやすいのが、家具のEC販売における試し置き機能です。ソファやテーブルなどをスマートフォンの画面上で部屋に表示することで、実際に置いたときのサイズ感や雰囲気を確認しやすくなり、購入判断の助けになります。大きさや配置が重要な商品ほど、ARの価値を感じられます。
実際にニトリは、公式通販サイトでARサービスを提供しています。スマートフォンで家具を部屋に表示して、実寸に近いサイズ感や設置したときの見え方を確認できるため、サイズや雰囲気などに対する購入前の不安を減らすことができます。
コスメのバーチャル試用
コスメも、ARと相性のよい商品ジャンルのひとつです。リップやチーク、アイシャドウなどは、色味や肌なじみが購入の決め手になりやすい一方で、ECサイトでは実際に試してから選ぶことができません。
ARを使ったバーチャル試用では、スマートフォンやPCの画面上で、自分の顔にカラーを重ねながら確認できます。実店舗でテスターを使う場合よりも、オンライン上では多数の商品を試用できる点も大きなメリットです。
たとえば資生堂オンラインストアの「バーチャルメイク」では、口紅やアイシャドウ、チークなどをARで顔に重ねてシミュレーションし、色の濃さを調整したり、使用前後を比較したり、ほかの資生堂商品と組みあわせて相性をみたりできます。
ファッション小物の試着・確認
メガネやサングラス、帽子、アクセサリーなどを扱うアパレルECサイトでは、単体で見たデザインだけでなく、実際に身につけたときの印象や顔まわりとのバランスを見たいというユーザーニーズがあります。
ARを使えば、自分の顔や体に商品を重ねながら、サイズ感や見え方を確認しやすくなります。写真だけでは判断しにくい形の違いや全体のイメージを購入前につかめるので、不安の軽減につながります。
実例として眼鏡ブランドのZoff(ゾフ)は、3D WEB試着サービス「EASee Zoff Virtual Fitting(イージーゾフバーチャルフィッティング)」を提供しています。オンライン上でメガネをバーチャル試着できるだけでなく、顔のサイズを計測し、実寸に近い形で見え方を確認できる点が特徴です。
商品の細部や仕様の違いの確認
ARや関連するシミュレーション機能は、商品を置いたときの見え方だけでなく、細部や組み合わせを確認する用途にも活用できます。ECサイトでは、正面からの写真だけではわかりにくい質感や素材の違い、仕上がりの印象などが購入の迷いにつながることがあります。
こうした場合に、商品の一部を拡大して見たり、他の仕様と比較できたりすると、購入後のイメージを持ちやすくなります。とくに、デザイン性の高い商品や、フレーム・色・仕様の選択肢が多い商品では、細かな違いを確認しやすい見せ方が重要です。
たとえばアートポスター・アートパネルを販売するartgraph.(アートグラフ)は、2026年3月1日に、アプリ不要で使えるAR・合成シミュレーション機能を公式オンラインストアに実装しました。部屋への配置確認に加えて、フレームの種類や余白の有無も選べる仕組みになっているそうです。。
拡張現実(AR)の将来性
拡張現実(AR)は、ECサイトや通販だけでなく、観光案内、教育、医療、製造業など、さまざまな分野で活用が広がっている技術です。
Fortune Business Insightsのレポートによると、世界のAR市場規模は2025年の1,403億4,000万ドルから、2034年には2兆3,449億ドルに急拡大すると予測されています。
さらにIDCの調査(英語)によると、VR(仮想現実)やMR(複合現実)を含めたXR市場においてスマートグラスを含むデバイスの成長はさらに続くと予測されており、ARを体験する手段そのものも広がっていくとみられます。スマートフォンやタブレットだけでなく、今後はより自然な形でARを利用できる環境が整うことで、ARは生活や買い物の中でさらに身近な存在になっていくでしょう。
まとめ
拡張現実(AR)とは、現実の風景や空間にデジタル情報を重ねて表示する技術です。ECサイトや通販では、家具やインテリアの試し置き、コスメのバーチャル試用、ファッション小物の試着、商品の細部確認などに活用されており、購入前の不安をやわらげる手段として注目されており、商品によってはARをECサイトに取り入れるメリットが多くあります。
実店舗のように商品を直接手に取れないECでも、ARを活用することで購入者にとって納得感のある買い物体験につながります。写真や説明文だけでは伝わりにくいサイズ感や使用イメージを補いやすくなるため、商品理解を深めたり、購入後のミスマッチや返品を抑えたりすることも期待できます。今後も、EC体験を高める技術のひとつとして、さまざまな商品ジャンルで活用が広がっていくでしょう。ARを活用したShopifyストアも多数あるので、ぜひ参考にしてみてください。
拡張現実(AR)についてのよくある質問
拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の違いは?
拡張現実(AR)は、現実の風景や空間にデジタル情報を重ねて表示する技術です。一方、仮想現実(VR)は、現実とは切り離された仮想空間の中に入り込んで体験する技術です。
ARはスマートフォンやタブレット、スマートグラスなどを通して現実に情報を重ねるのに対し、VRはヘッドセットなどを使って仮想空間そのものを体験する点に違いがあります。ECサイトでは、普段の生活空間の中で商品を確認できるARのほうが活用しやすいといえるでしょう。
ARはどのような商品で活用しやすいですか?
ARは、サイズ感や見た目、使ったときの印象が購入判断に大きく関わる、家具やインテリア、コスメ、メガネ、サングラス、アクセサリーなどの商品と相性がよいです。また、仕様の違いや細部の見え方が重要な商品にも向いています。購入前にイメージをつかみやすくしたい商品ほど、ARの効果を感じやすいといえます。
ShopifyでARを使えますか?
はい、Shopifyでは対応するテーマやアプリを導入することで、3DモデルやARを活用した商品表示といった機能を簡単に導入できます。商品を立体的に見せたり、実際の空間に置いたイメージを確認しやすくしたりできるため、サイズ感や使用イメージを伝えたい商品と相性がよいです。
文:Taeko Adachi





