EC業界は拡大を続けており、消費動向やテクノロジーの変化を背景に、トレンドも多様化しています。特に近年は、AIの活用やSNSを起点とした購買行動の広がり、越境ECの成長、さらには実店舗とECを連携させるOMO施策の浸透などが、競争力を左右する重要なテーマとなっています。
本記事では、EC業界の最新トレンドに加え、EC市場規模や成長分野、市場拡大の背景などを解説します。
EC業界の動向や通販市場のトレンドを把握したい方、EC戦略の見直しや販路拡大を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

日本国内におけるEC市場規模
経済産業省の電子商取引に関する市場調査によると、2024年の日本国内におけるBtoC EC(消費者向け電子商取引)市場規模は26.1兆円となり、前年比5.1%増加しました。BtoB EC(企業間電子商取引)市場規模も514.4兆円まで拡大し、前年比10.6%増となっており、商取引全体のデジタル化が進んでいます。
また、EC化率はBtoC ECで9.8%、BtoB ECで43.1%となり、前年からそれぞれ上昇しています。特にBtoB ECのEC化率は4割を超えており、企業間取引におけるデジタル化が進んでいます。EC化率とは、すべての商取引に対してECが占める割合を示す指標であり、日本国内でEC利用が継続的に拡大していることがわかります。
さらに、個人間取引であるCtoC EC市場も拡大しています。フリマアプリなどの普及を背景に、個人間取引の利用が広がっており、EC市場拡大を支える分野の一つとなっています。
日本・米国・中国間の越境EC市場規模
同調査によると、日本、米国、中国間の越境EC市場も拡大を続けています。
中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆6,372億円となり、前年比8.5%増加しました。また、中国消費者による米国事業者からの購入額は3兆1,397億円となっています。
越境EC市場では、中国市場の規模が引き続き大きく、日本企業にとっても海外販路拡大を進めるうえで重要な市場の一つとなっています。

EC市場で成長している注目分野
物販系を中心にEC市場の拡大が続いています。特に、生活に密着した商品やオンライン上で比較や購入がしやすい分野では、市場規模やEC化率の伸長が見られます。
また、サービス系分野でも、需要回復やデジタル化を背景に利用拡大が進んでいます。
- 食品、飲料、酒類:市場規模は3兆1,163億円となり、物販系分野のなかで最大規模となっています。日常消費との親和性が高く、EC利用の定着が進んでいる分野です。
- 生活家電、AV機器、PC・周辺機器等:市場規模は2兆7,443億円、EC化率も43.03%と高く、商品比較やレビュー確認との相性が良い分野です。
- 衣類・服装雑貨等:市場規模は2兆7,980億円となっており、物販系EC市場のなかでも規模が大きい分野です。
- 生活雑貨、家具、インテリア:市場規模は2兆5,616億円となっており、豊富な商品を比較しやすいことや、自宅配送との相性の良さからEC利用が広がっています。
- 書籍、映像・音楽ソフト:EC化率は56.45%と、物販系分野のなかで最も高い水準で、オンライン購入が定着している代表的な分野です。
- 旅行サービス:前年比約10%増加しており、旅行需要の回復を背景に、オンライン予約利用が拡大しています。
- 飲食サービス:前年比約18%増加しており、デリバリーやテイクアウト予約など、オンライン経由での利用拡大が進んでいます。
- 金融サービス:前年比約16%増加しており、オンライン上での契約や申し込み手続きの利用が広がっています。
EC市場が拡大している背景
EC市場が拡大している背景には、デジタル環境の変化や消費行動の多様化があります。スマートフォンの普及によって、時間や場所を問わず商品を購入できる環境が整っていることや、キャッシュレス決済の浸透により、オンライン購入がしやすくなっています。
また、オムニチャネルの浸透もEC市場拡大を後押ししています。実店舗とECを連携させることで、店舗受け取りや在庫連携など利便性が向上し、オンラインとオフラインを横断した購買行動が広がっています。
インフレ傾向により物価が上昇するなか、価格や口コミを比較したうえで商品を購入するユーザーも増えています。ECは複数の商品情報を効率的に確認できるため、比較検討との相性が良い点が特徴です。
さらに円安の影響で、日本製品を海外から購入する動きも拡大しています。海外のユーザーにとって日本製品の割安感が高まっていることに加え、品質面への評価も越境EC需要拡大の要因となっています。
このように、購買環境のデジタル化や、消費者の価値観と経済環境の変化が、EC市場拡大を後押ししています。
最新ECトレンドと予測13選
- モバイルEC中心の購買行動の加速
- SNSやライブコマース経由の購買拡大
- パーソナライズ需要の高まり
- 商品情報の充実化ニーズ拡大
- AI活用によるEC運営の高度化
- ARや3Dモデル活用の広がり
- キャッシュレス決済やデジタルウォレット対応の重要性の高まり
- OMOやユニファイドコマースの重要性の高まり
- サブスクリプション型ECの導入拡大
- 越境EC市場の成長継続
- リユース市場やリセール市場の拡大
- サステナブル消費への関心の高まり
- 物流効率化や置き配対応ニーズの拡大
1. モバイルEC中心の購買行動の加速
スマートフォンの普及により、時間や場所を問わず商品を購入できる環境が整い、モバイルECは主要な販売チャネルとして定着しています。通勤中や外出先などのスキマ時間に商品を検索または購入する行動も一般化しており、市場は拡大を続けています。
そのため、モバイルファーストを前提としたEC設計の重要性が高まっています。サイト表示速度やUI/UXの最適化は、購入率や離脱率に直接影響を与える重要な要素となっています。
また、スマートフォンアプリやメルマガ、LINE(ライン)などを活用した販促施策の強化も進んでいます。今後は、モバイル環境を前提とした購買体験設計が、EC競争力を左右する要因の一つになるでしょう。
2. SNSやライブコマース経由の購買拡大
Instagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)などのSNSを起点に商品を認知し、そのまま購買につながる行動が拡大しています。特に若年層を中心に、検索エンジンではなくSNS上で情報収集から購買まで完結する動きが広がっています。
また、ライブ配信を通じて商品を販売するライブコマースも注目されています。リアルタイムで商品の使用感や特徴を伝えられるほか、視聴者とコミュニケーションが可能なため、購入前の不安軽減につながる点が特徴です。
企業側ではSNSエンゲージメントを重視する動きが強まっており、コメントへの返事やUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用などを通じて、ユーザーとの接点強化が進んでいます。
さらに、インフルエンサーマーケティングの活用も広がっており、SNS上で認知拡大から購買までを一貫して促す取り組みが進んでいます。
3. パーソナライズ需要の高まり
消費者ニーズの多様化により、一人ひとりに最適化された情報や商品を提案するパーソナライズ施策への注目が高まっています。閲覧履歴や購入履歴を活用して、おすすめ商品やクーポンを表示するECサイトも増えています。
また、顧客から直接入手したファーストパーティデータを活用したマーケティング施策への関心も高まっています。
こうした取り組みにより、顧客体験やLTV(顧客生涯価値)の向上に加え、需要予測の精度向上や物流効率化などにもつながることから、パーソナライズの重要性はさらに高まっていくでしょう。
4. 商品情報の充実化ニーズ拡大
EC利用の拡大に伴い、購入前により詳細な商品情報を求める消費者も増えています。
商品画像に加え、レビューや動画、UGC、サイズ感、使用イメージなど、多角的な情報を提供するECサイトが増加しています。オンラインでは実物を確認できないため、購入前の不安を軽減する情報設計が重要です。
特に、比較検討を重視する消費トレンドの広がりを背景に、商品説明の充実度が購買率に影響するケースも増えています。また、実際の使用感やサイズ感を具体的に伝えることで、「イメージと違った」といった理由による返品防止にもつながります。
5. AI活用によるEC運営の高度化
近年は、商品レコメンドやチャットボットによる問い合わせ対応に加え、需要予測や在庫管理など、幅広い業務でAI活用が進んでいます。Shopify(ショッピファイ)のSidekick(サイドキック)のように、商品説明作成や販促提案を支援するAIツールも登場しています。人手不足や運営負担増加への対応策として、導入を進める企業が増えています。
また、AIによるショッピングアシスタントへの注目も高まっています。顧客の「検索→相談→購入」までの導線を短縮できるほか、「商品発見→比較→よくある質問」といった流れをスムーズにサポートできる点が特徴です。
こうしたAIの活用は、EC運営の効率化と顧客体験の向上の両面を支える技術として、EC業界で存在感を高めています。
6. ARや3Dモデル活用の広がり
ECではARや3Dモデルを活用した商品体験の高度化が進んでいます。特に、家具やインテリア、アパレル分野では、購入前にサイズ感や使用イメージを確認したいというニーズが高まっており、ARや3Dモデルを活用することで、オンライン上でも実店舗に近い購買体験を提供しやすくなります。
家具やインテリアは、実店舗で確認しても自宅に置いたときのイメージがわかりにくいケースも少なくありません。ARを活用することで、実際の部屋に商品を配置したイメージをスマートフォン上で確認できるため、より具体的な購買体験につながる点も特徴です。
ニトリでは、「見たい商品が店頭になかった」「商品の大きさのイメージがわかりにくい」「お家のコーディネートに合うかわからない」といった顧客の声を背景に、AR機能を活用した家具の試し置きサービスを導入しています。スマートフォン上で自宅空間に家具を配置し、サイズ感やインテリアとの相性を確認できるため、大型家具購入時の不安軽減につながっています。
7. キャッシュレス決済やデジタルウォレット対応の重要性の高まり
EC市場では、クレジットカードに加え、QRコード決済やApple Pay(アップルペイ) などのデジタルウォレットをはじめ、多様な決済方法への対応が求められています。
また、BNPLへの注目も高まっています。購入時の負担を抑えながら利用できる点から、高額商品の購入ハードルを下げやすく、平均注文額(AOV)の向上やカゴ落ち防止につながる決済手段として導入が広がっています。
こうした決済方法の多様化は、購入体験の利便性を高め、購入率にも影響します。選択肢が少ない場合は離脱につながるため、ワンページチェックアウトなどスムーズな決済環境の整備が重要です。
大手ECサイトのAmazonでも、トレンドを踏まえ、多様な決済方法への対応を進めています。クレジットカードに加え、PayPay(ペイペイ)やメルペイ、あと払い(ペイディ)などを導入し、購入時の利便性向上につなげています。
8. OMOやユニファイドコマースの重要性の高まり
ECでは、実店舗との連携を踏まえた購買体験の設計が広がっています。
たとえば、オンラインで注文した商品を店舗で受け取れるサービスや、店舗在庫をECサイト上で確認できる仕組みなどが代表例です。オンラインとオフラインを連携させることで、顧客の利便性向上や購買機会の拡大につながります。
また、ECサイトや実店舗、アプリなど複数チャネルの顧客データや在庫情報を統合管理するユニファイドコマースの注目も高まっています。販売チャネルごとに分断されていた情報を一元化することで、よりスムーズな購買体験を提供しやすくなります。
今後は、オンラインとオフラインを横断したシームレスな顧客体験を提供できるかどうかが、EC競争力を左右する重要な要素となっていくでしょう。
john masters organicsでは、会員情報やポイント、購入履歴などのデータを一元管理し、実店舗・自社EC・ECモールをまたいだ販売管理の効率化を実現しています。
さらに、会員IDを軸にオンラインとオフラインを連携させることで、一貫した購買体験を提供できる仕組みを構築しています。
こうした取り組みにより、CRM(顧客関係管理)施策の精度向上やLTV向上につながっており、OMO戦略とユニファイドコマースの実践が進んでいます。
9. サブスクリプション型ECの導入拡大
食品やコスメ、日用品などを中心に、定期購入型のサブスクリプションサービスを導入する企業が増えています。LTV向上や安定的な収益確保を実現するECのビジネスモデルとして注目されています。また、消耗品を定期的に届けられる利便性から、ユーザー側の需要も拡大しています。
こうしたメリットがある一方で、継続利用を前提とするモデルであるため、解約率(チャーンレート)の抑制や継続率の改善に向けた取り組みが重要なテーマとなっています。
10. 越境EC市場の成長継続
越境EC市場は引き続き拡大しており、近年は円安を背景に、日本製品を海外から購入する動きが広がっています。特に、日本製品の品質への評価やインバウンド需要の拡大を受け、海外での需要が高まっています。
また、海外配送サービスや多言語対応サービスの拡充により、中小企業でも越境ECへ参入しやすい環境が整っています。さらに、ECプラットフォームの進化に加え、翻訳機能やローカライズの高度化が進んだことで、海外販売のハードルも年々低下しています。
こうした変化を背景に、越境ECは大企業だけでなく中小事業者にとっても重要な販路として定着しつつあります。
11. リユース市場やリセール市場の拡大
リユース市場やリセール市場は、従来の小売市場を上回るスピードで拡大しており、特にZ世代を中心に、中古アパレルを購入する動きが広がっています。フリマアプリやリユースサービスの普及により、中古品への抵抗感が低下していることに加え、他人と被りにくく、自分らしさを表現できる点も支持されています。
また、物価上昇による節約志向や、サステナブルへの関心拡大も市場成長を後押ししています。大手小売企業でもリセール市場への参入が進んでおり、買い取りや下取りプログラムを展開する企業も増えています。
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)ではZOZOUSEDを展開しており、ブランド古着をオンライン上で売買できるリユースサービスを提供しています。AIを活用した価格設定や在庫管理により、リユース商品の効率的な流通を実現している点も特徴です。
また、ZOZOTOWN独自の「買い替え割」では、過去にZOZOTOWNで購入した商品を買い取りに出し、その査定額を新たな購入へ充当できる仕組みを導入しています。リユースを単なる中古販売にとどめず、次の購買につなげる循環型ECモデルとして注目されています。
12. サステナブル消費への関心の高まり
環境配慮や社会課題への意識向上により、サステナブルへの関心が高まっています。近年は、簡易包装やリサイクル素材を活用した商品展開に加え、カーボンニュートラル配送や環境に配慮した輸送サービスなど、物流面での環境負荷低減を意識した取り組みも広がっています。
また、返品増加は配送回数や廃棄増加にもつながるため、ARや3Dモデルによる購入前の情報提供強化など、返品削減を目的とした施策への注目も高まっています。
ShopifyのShopify Planet(ショッピファイ・プラネット)では、配送時のカーボンニュートラル化を支援しており、環境配慮への取り組みをユーザーに訴求できる仕組みを提供しています。さらに、利益の一部を地球環境保護団体へ寄付できる点も特徴です。
13. 物流効率化や置き配対応ニーズの拡大
物流業界の人手不足や再配達問題を背景に、物流効率化への対応が重要視されています。特に、置き配や宅配ロッカーの拡大は、再配達削減や配送負担軽減に効果的な施策として導入が進んでおり、CO2排出量削減の観点からも注目されています。
また、配送状況をリアルタイムで確認できる機能など、配送の利便性向上に向けた取り組みも進んでいます。
今後は、配送スピードだけでなく、効率性や持続可能性を重視した物流体制の構築がより重要になっていくでしょう。
まとめ
EC業界では、消費行動や技術の変化を背景に、購買体験や運営手法の高度化が進んでいます。スマートフォンを起点とした購買行動の定着に加え、SNSやライブコマースを通じて商品を認知し、そのまま購入に至る流れも一般化しつつあります。
また、AI活用による業務効率化やレコメンド精度の向上など、EC運営の最適化も進んでいます。さらに、OMOやユニファイドコマースの普及によって、オンラインとオフラインを横断した一貫性のある購買体験への注目も高まっています。
キャッシュレス決済やBNPLの拡大、サステナブルやリユース市場の成長など、決済、環境、流通の各領域でも変化が見られます。今後は、利便性と購買体験の質に加え、持続可能性も重視したECのあり方がより求められていくでしょう。
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EC業界の最新トレンドに関するよくある質問
EC業界ではどのような最新トレンドが進んでいる?
EC業界では、モバイル購買の定着や、SNS、ライブコマース、AI活用、OMOなどを中心に、購買体験の高度化が進んでいます。
AI活用はEC業界でどのように進んでいる?
AIは、商品レコメンドや在庫管理、需要予測、チャットボットによる問い合わせ対応など、EC運営全体の効率化や顧客体験向上に活用されています。
サステナブルへの関心がEC業界に与える影響は?
簡易包装やリサイクル素材の活用に加え、配送効率化やカーボンニュートラル配送など、環境負荷を意識したEC運営への取り組みが広がっています。












