Z世代は日本の人口の約15%を占めており、今後は社会人としての割合が高まることで、消費の中心を担うことが見込まれています。さらに、ブルームバーグのレポート(英語)によると、世界人口の約32%を占める最大規模の世代とされ、今後のグローバル市場を牽引する層です。
また、社会課題や価値観への意識が他の世代と大きく異なるため、企業にとってはZ世代に適したマーケティング戦略が、将来の収益に直結する重要なポイントとなります。
本記事では、Z世代の特徴や消費傾向を整理したうえで、具体的なマーケティング手法と企業の成功事例を紹介します。
Z世代とは
Z世代とは、一般的に1990年代後半から2010年代序盤に生まれた世代を指します。生まれ年の明確な定義はなく、国や調査によって多少異なりますが、現在の10代前半から20代後半の若年層が該当します。社会人として働く層と、これから社会に出る学生層の双方を含み、今後の社会や消費を担う存在として注目されています。
この世代の大きな特徴は、インターネットやスマートフォンが身近にある環境で育った「デジタルネイティブ」という点です。幼少期からスマートフォンやタブレットを使って情報収集やコミュニケーションを行い、SNSの活用にも積極的で、自ら情報を発信・共有する力を持っています。
高速インターネット環境の普及とともに育ったため、オンライン上の情報リテラシーが高いのも特徴です。

Z世代の価値観と消費行動の特徴
SNSや口コミを起点とした情報収集と意思決定
Z世代は、購入前に複数の情報源を横断して調べるリサーチ志向が強く、SNSや口コミ、レビューを重視して意思決定を行います。Instagram(インスタグラム)、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティックトック)、X(エックス)などをフォローして日常的に情報収集を行っています。有名人を起用した広告よりも、実際のユーザー体験や評価に影響を受けやすく、購入後はSNSで感想を発信する傾向があります。このように、Z世代においては、情報収集・購買・発信が一体化しているのが特徴です。
共感やリアルさを重視する購買行動
Z世代は、商品やサービスの背景にあるブランドストーリーや企業の価値観に共感できるかを重視します。広告色の強い表現は敬遠されやすく、企業の姿勢や透明性、リアルな発信が求められます。また、特定のブランドへの固定的なロイヤルティは比較的弱く、自分らしさを表現できるかどうかがブランドを選ぶ重要な判断基準となります。価格や機能だけでなく、感情的な満足感や「好き」という気持ちが購買を後押しする「共感消費」の傾向も見られます。
体験価値を重視する消費行動
Z世代は、モノの所有よりも体験そのものに価値を見いだす傾向があります。これは一般に「コト消費」と呼ばれ、旅行やイベントといった特別な体験だけでなく、商品の購入から使用、SNSでの共有までを一連の体験として楽しむ点が特徴です。また、特定の場所や瞬間でしか得られない体験に価値を感じる「トキ消費」も好まれます。
効率性を重視する合理的な消費
Z世代は、コストや時間の無駄を避ける意識が強く、いわゆる「タイパ(時間対効果)」を重視した行動を取ります。短時間で情報を得られるショート動画や、手軽に利用できるサービスを好む傾向があり、効率的に比較・判断する力に長けています。一方で、単に安さを追求するのではなく、自分が価値を感じたものには対価を支払う傾向もあり、納得感のある消費が重視されます。
社会課題やサステナビリティへの関心
Z世代は、環境問題や社会課題に対する意識が高く、企業の倫理観や社会的責任も購買判断の基準となります。こうした価値観に基づく消費は「イミ消費」とも呼ばれ、サステナブルな商品や社会的意義のある取り組みに共感して選択する傾向があります。

Z世代向けマーケティング戦略
- 最適なSNSプラットフォームとコンテンツを活用する
- インフルエンサーとUGCにより拡散する
- 双方向コミュニケーションでコミュニティを育てる
- ブランドの価値観とストーリーを伝える
- シェアされる体験と参加型コンテンツを設計する
- 根拠のある情報開示で信頼性を担保する
最適なSNSプラットフォームとコンテンツを活用する
Z世代のマーケティングトレンドを注視し、SNSごとの特性に合わせてコンテンツを作り分けることが重要です。
例えば、TikTokではエンタメ性の高いショート動画で拡散を狙い、Instagramではビジュアル重視の投稿でブランドの認知を広げます。YouTubeではレビューや活用方法などの深い情報をロング動画で提供し、企業アカウントをフォローする傾向が強いXでは最新情報やキャンペーンを発信するのも有効でしょう。さらに、SNS上で興味を持ったユーザーがそのまま購入できるよう、投稿からECへの導線を設計することも効果的です。
インフルエンサーとUGCにより拡散する
広告色を抑えた情報発信を行うために、インフルエンサーやUGCを活用するのも有効です。実際の使用感や体験をベースにした発信は、信頼性が高く拡散されやすいのが特徴です。インフルエンサーには過度な演出を求めず、自然な表現に任せることでリアリティを保ちましょう。また、レビュー投稿やSNSでのシェアを促す仕組みを整えることで、ユーザー自身が情報発信者となり、エンゲージメントの向上につながります。
双方向コミュニケーションでコミュニティを育てる
一方的な情報発信ではなく、ユーザーと継続的に関わる仕組みを作ることが重要です。ハッシュタグキャンペーンや投稿企画、アンケートなどを通じて参加を促し、ブランドとの接点を増やします。寄せられたコメントやフィードバックには適切に対応し、関係性を深めることがポイントです。こうした双方向のやり取りの積み重ねにより、ブランドを支えるコミュニティを形成できます。
ブランドの価値観とストーリーを伝える
Z世代に向けては、商品やサービスに加え、ブランドの背景にある考え方や姿勢を明確に伝えることが求められます。環境や社会への配慮、製造プロセスの透明性、開発の背景などを具体的に示し、発信内容と実態を一致させることが重要です。表面的なメッセージにとどまらず、事業全体に根差した価値観として一貫して伝えることで、共感と信頼の獲得につながります。
シェアされる体験と参加型コンテンツを設計する
購買までを一貫したブランド体験として設計することで拡散を促せます。イベントやキャンペーンでは、写真や動画を撮影し共有しやすい仕掛けを用意し、ユーザーが自発的に発信したくなる環境を整えます。トレンドやエンタメ性を取り入れた企画や、思わず誰かに共有したくなる要素を組み込むことで、自然な形での拡散が期待できます。
根拠のある情報開示で信頼性を担保する
信頼を得るためには、情報の正確性と透明性を担保することが不可欠です。商品やサービスの詳細、データ、第三者による評価などを分かりやすく提示し、ユーザーが納得して判断できる環境を整えます。公式サイトやSNSで誰でも確認できる形で情報を公開することで、安心感の醸成と長期的な信頼関係の構築につながります。
Z世代マーケティングの注意点
広告色を強めすぎない
Z世代向けの発信では、売り込み色が強すぎる表現や、作り込まれすぎた広告は敬遠されやすい傾向があります。SNS上で日常的に多くの情報に触れているため、企業が一方的に訴求するメッセージよりも、実際の利用者の声や自然な発信の方が信頼されやすくなっています。過度な演出よりも、使用シーンやリアルな体験が伝わる表現の方が受け入れられやすいでしょう。
PR表記や適切な情報開示を行う
インフルエンサー施策やタイアップ投稿では、広告であることを明確に伝えることが重要です。日本でも、広告であることを隠すいわゆるステマは規制対象となっており、表示方法には注意が必要です。
特にZ世代は拡散力が高く、透明性を重視する傾向があるため、製品やサービスに問題があった場合には、炎上などのリスクが高まります。そのため、適切な情報開示を徹底することが重要です。
多様性や倫理観への配慮を欠かさない
話題性やインパクトを優先するあまり、特定の属性を単純化して描いたり、誤解を招く表現になったりすると、共感ではなく反発を招く可能性があります。
Z世代は価値観や社会課題への関心が高く、企業の姿勢も含めて評価する傾向があります。そのため、情報発信前のチェック体制を整え、意図しない誤解を防ぐことも欠かせません。
Z世代マーケティングの成功事例6選
1. セブンイレブン:インフルエンサーとの商品開発とSNS連動
株式会社セブンイレブン・ジャパンは、Z世代に人気のインフルエンサーであるパンナコタさんが監修し、カバヤ食品が製造した新商品「激辛コーラグミ」を全国のセブンイレブンで先行発売しました。パンナコタさんはSNS総フォロワー数430万人以上を持ち、激辛チャレンジ動画で若者から支持を集めています。発売にあわせて本人がYouTubeで関連動画を投稿するなど、商品開発とSNS発信を連動させることで、自然な話題化と拡散を実現しました。
2. はるやま商事:Z世代に近いタレント起用による共感創出
はるやま商事株式会社は、「褒められスーツ」のプロモーションにおいて、俳優の高橋文哉さんとアイドルグループFRUITS ZIPPERを起用しました。いずれもZ世代に近い世代で高い人気を持つことから、従来のスーツに対する堅いイメージを和らげ、親しみやすさを訴求しています。ターゲットと距離の近いキャスティングにより、自分ごととして捉えやすいコミュニケーションを実現した事例です。
3. ほっかほっか亭:SNSトレンドを取り入れたエンタメ型コンテンツ
株式会社ほっかほっか亭総本部は、「面白くなければ響かない」という考えのもと、揚げ物の魅力を伝える新たな表現として、ミュージックビデオ風の動画コンテンツを展開しました。ラップやダンスを取り入れた構成に加え、SNSで流行している言葉やミームを組み込むことで、視聴したくなる仕掛けを設計しています。TikTokやInstagramを中心に配信することで、商品訴求をエンタメとして届ける取り組みとなっています。
4. ザ・プリンス ヴィラ軽井沢:体験価値を高める宿泊プラン設計
ザ・プリンス ヴィラ軽井沢は、Z世代向けの宿泊プランとして「カルプリヴィラで贅沢しない? 冬の想い出旅」を展開しました。1棟貸しのヴィラに加え、温泉やアクティビティの利用特典を組み合わせることで、滞在そのものを楽しめる設計となっています。さらに、レンズ付きフィルムカメラを提供し、現像するまで分からない「エモい瞬間」を持ち帰れる体験を提案しました。
5. 味の素AGF:脱炭素をテーマにしたZ世代との共創プロジェクト
味の素AGF株式会社は、若年層との接点強化を目的に「ミラファンプロジェクト」を展開し、脱炭素(デカボ)をテーマにZ世代との共創に取り組みました。学生を中心としたアンバサダーとともに、商品を起点に新たな価値を考え、環境配慮と日常の使いやすさを両立したマーケティング戦略を創出しています。企業が一方的に発信するのではなく、Z世代の視点を取り入れながら社会課題に向き合う姿勢を示した点が特徴で、共感を軸とした関係構築につながる事例です。
6. 三菱地所・サイモン:Z世代の行動に合わせた「ショートトリップ」提案
三菱地所・サイモン株式会社は、プレミアム・アウトレットの来場促進を目的に、雑誌「ViVi」と連携したプロモーションを展開しました。Z世代の調査をもとに、「友人と楽しむ日帰り旅行」というショートトリップをテーマに設定し、人気タレントによる動画をSNSで配信しています。買い物だけでなく周辺観光も含めた一日の過ごし方を提案し、来訪の動機づくりにつなげています。
まとめ
Z世代は、SNSや口コミを起点に情報を収集し、共感や体験価値を重視して購買を判断する世代です。効率性や自分の納得感を重視する一方で、社会課題や企業の姿勢にも目を向けるなど、多角的な視点でブランドを評価しています。
広告色の強い表現や、企業の一方的な情報発信は信頼を損なうリスクがあるため、Z世代向けマーケティングでは、SNSや動画を活用した発信に加え、インフルエンサーやユーザーの声を取り入れた自然なコミュニケーションが重要になります。
また、ブランドの価値観や背景を一貫して伝え、体験として共有される設計を行うことで、共感と拡散を生み出すことができます。双方向のコミュニケーションによってエンゲージメントを高めることで、継続的な信頼関係の構築が求められます。
Z世代は、今後の消費の中心となる存在です。短期的な反応だけでなく、長期的なブランド形成につながる施策を意識することが、これからのマーケティングにおいて重要になるでしょう。
Z世代マーケティングに関するよくある質問
Z世代をターゲットにしたマーケティング方法は?
SNSや動画を活用し、プラットフォームごとに最適化した発信を行うことが基本です。トレンドへの感度が高いため、インフルエンサーやユーザー投稿を取り入れた自然な情報拡散に加え、体験として共有されやすい企画を設計します。あわせて、ブランドの価値観や背景を一貫して伝え、共感と信頼を積み重ねることが重要です。
Z世代がマーケティング担当者にとって重要な理由は?
Z世代は今後の消費の中心となる世代であり、社会人としての比率も高まりつつあります。購買判断において価値観や社会性を重視する傾向があり、早い段階から関係性を築くことで将来的な顧客獲得やブランドファンの醸成につながるため、中長期的に重要なターゲットといえます。
Z世代マーケティングは従来の手法とどう違う?
従来の広告中心の一方向的な情報訴求に対し、Z世代マーケティングでは、SNSや口コミを通じた双方向のコミュニケーションが重視されます。価格や機能だけでなく、共感や体験価値、企業の姿勢が評価に影響するため、表面的な施策ではなく一貫した価値提供が求められます。
文:Norio Aoki





