デジタル環境の変化により、マーケティングトレンドは年々更新されています。最新動向やマーケティング手法のトレンドをいち早く把握し、自社の戦略に取り入れるか否かで、競合他社との競争力に差がつきます。特にSNSマーケティングやWebマーケティング、コンテンツマーケティングのトレンドは、顧客との接点づくりや購買行動において無視できない要素です。
本記事では、今押さえておくべき最新のマーケティングトレンドを紹介します。施策に落とし込むための考え方もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. AI活用によるマーケティングの自動化
マーケティングでのAI活用は、これまで以上に高度なMA(マーケティングオートメーション)を実現しています。コンテンツ制作のコストや時間を削減するため、ChatGPTやGemini(ジェミニ)などの生成AIを活用する取り組みはすでに広く行われるようになりました。
また、広告運用の面でも、AIによる新たな手法が生まれています。たとえばサイバーエージェントが開発した「CA-GAS(シーエー ギャス)」は、ユーザーの検索意図をAIが読み解き、ランディングページや広告文を生成することで、あらかじめ用意された広告クリエイティブに縛られず、より細分化された配信を可能とします。これにより先行テストでは、CPAを維持したままCV数が1.34倍に改善したと公表されています。
2. 1to1マーケティング
1to1マーケティングは、年齢や性別といった属性だけで顧客をまとめず、購買履歴・閲覧履歴などの行動データを手がかりに、表示される情報やサイト内導線といった顧客体験を個人単位で最適化する考え方です。
たとえば、興味関心に合わせておすすめ商品のレコメンドやクーポンを「買いそうな時」に届けられれば、コンバージョン率(CVR)や顧客生涯価値(LTV)、顧客獲得単価(CPA)の改善につながります。これらの施策もAIなどの登場で自動化が進んでおり、メールの文面からWebサイトの表示、広告クリエイティブに至るまで、顧客ごとに適したコンテンツを出し分けできるようになっています。
ECでも、メールマーケティングやアプリ通知、LINE公式アカウントなどは1to1施策を始めやすいチャネルです。配信内容を一律にするのではなく、購入直後、検討中、しばらく買っていないといった行動段階に応じて内容を分けると、不要な配信を減らしつつ反応を得やすくなります。
3. UGCを積極的に活用したSNSマーケティング
SNSマーケティングにおける近年のトレンドは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の積極的な活用です。たとえば「精肉店和達」は、A5和牛肉をケーキ型にまとめたギフト商品など話題性のある商品を発信するとともに、購入者の投稿を積極的にリポストすることで、コミュニティづくりにつなげています。
単なる商品PRではない消費者からの反応は商品を使う場面を想像しやすくなり、実際に購入したユーザーの感想は品質の高さなどに信ぴょう性を与えてくれる効果があります。また、企業側からコメントへの返信を続けたりといった双方向のやり取りは、ユーザー側に投降しやすい雰囲気や、ブランドへの信頼や親近感を生みだします。こうした発信は、認知の拡大だけで終わらせず、ECサイトへの再訪やリピート購入の後押しにもつながります。
4. ショート動画・縦型動画マーケティング
TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)のリール動画、YouTubeショートの普及により、ユーザーのスマホ視聴を前提としたショート動画や縦型動画をマーケティングに活用する流れが強まっています。動画の強みは、写真やテキストだけでは伝わりづらい商品の質感やサイズ感、使用シーンを一目で見せられる点です。着用イメージや開封、使い方の手順、ビフォーアフターなどを短くまとめることで、興味を持った人が商品ページまで進みやすくなります。
たとえばアパレルブランドの「apres jour(アプレジュール)」は、コーディネート提案や着用イメージの動画で、使う場面を想像しやすい発信をしています。
ショート動画では、冒頭の数秒で興味を引くことがポイントとなります。再生数だけで判断せず、視聴維持率や保存、プロフィール遷移、リンククリック、商品ページ閲覧などを見ながら、冒頭の見せ方や尺、字幕を調整すると改善点が見つかります。
5. ソーシャルコマース
ソーシャルコマースは、SNS上で商品を見つけ、その場で購入まで進められる仕組みです。従来のように別のECサイトへ移動する必要がないため、興味や関心が高いまま購入導線へつなげやすい点が特徴です。インスタのショップ機能やTikTok Shopなど、さまざまなSNSでソーシャルコマース機能が導入されつつあります。
そのなかでも特徴的なのが、ライブコマースです。使い方や使用感を配信で見せながら、リアルタイムの質問にも答えられるため、消費者の不安を減らして購入の後押しにつながります。インフルエンサーやUGCと組み合わせると、広告感を抑えつつ納得感を高めやすい点も強みです。たとえばスキンケアブランドの「akyrise(あきゅらいず)」は、自社のInstagramで定期的にライブ配信を行い、使い方やメイク方法などを紹介しています。コメントでの質問に答えながら理解を深めてもらえるため、購入に対する不安を減らす施策として効果的です。
6. コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、役立つ情報や価値あるコンテンツを通じて顧客との関係を構築し、購買やファン化につなげるマーケティング手法です。広告色を抑えつつ信頼を獲得できる点から、近年のWebマーケティングにおいて最も重要なトレンドのひとつとなっています。コンテンツを起点に見込み顧客を集め、集客後はメールやSNSで追加情報を届け、検討のタイミングに合わせて商談や購入へつなげます。
たとえば株式会社クラシコムの「北欧、暮らしの道具店」では、北欧の暮らしに関する読みものなどで共感を育て、メディアとしてのファンを増やす運用を行っています。まだ具体的な商品への購買意欲が高くない段階でも接点を持てるため、関心が高まったタイミングで同じサイト内の商品ページを見てもらいやすく、購入につながる導線を作ることができます。
7. AI検索への対策
ChatGPTなどをAIエージェントとして、インターネット検索の代わりに利用するユーザーが増えています。これにより検索結果を開かずに完結するゼロクリックも増え、SEOだけでは露出が安定しにくくなりました。
そこで最近は、検索エンジン向けのSEOに加えて、AIの信頼できる知識源として選ばれる「生成エンジン最適化(GEO)」と、Google検索の「AIによる概要」などに表示されるための「回答エンジン最適化(AEO)」に対応したコンテンツを作成する動きが広がっています。その具体例としては、一次情報を入れて出典を示す、運営者や著者情報を明記する、FAQ形式のコンテンツや構造化データの活用などが挙げられます。
ただし、AIを通じた誘導や流入についてはまだ効果が明確になっていない面もあります。たとえば「AIによる概要」に出ても、流入が増えない可能性があります。検索流入だけで判断せず、問い合わせや購入率まで含めて効果を確認するようにしましょう。
8. 音声・ビジュアル・動画検索に強いコンテンツ設計
検索はキーワード入力だけでなく、音声や写真、動画から探す行動が増えています。スマートフォンやスマートスピーカーの普及により、音声検索や画像検索を日常的に使う人も増えてきました。さらに、写真を見せながら質問して答えを得るなど、複数の情報を組み合わせた探し方も広がりつつあります。
音声検索では会話に近い質問形式が多くなるため、Webサイトやコンテンツでは簡潔で明確な回答が求められます。結論が伝わりやすいFAQページや要点を端的にまとめた説明文は、音声検索との相性が高いとされています。
一方でビジュアル検索は、画像や動画そのものが検索の対象です。商品の写真や使用シーンの画像、短い解説動画を充実させるとテキスト検索に依存しない流入を獲得しやすくなります。特にEC分野では、画像検索から商品ページへ誘導されるケースも増えています。店舗がある場合は、店舗情報もあわせて見直すと効果が出やすくなります。
9. データプライバシーと情報の信頼性
現代のデジタルマーケティングでは、データ活用と同時にプライバシー保護への配慮が強く求められています。Cookie(クッキー)規制などで外部の追跡に頼りにくくなったため、会員登録や購入、問い合わせなどで得た自社独自のファーストパーティーデータを活用してマーケティング施策を策定する流れが強まっています。なお自社データを収集する場合は、利用目的や配信停止の導線、問い合わせ窓口、保管期間などをユーザーへ示す必要があります。計測は可能ならサーバー側で行い、必要に応じて匿名化し、扱う人と権限も絞りましょう。規制対応を後回しにすると、罰金だけでなくブランドへの不信につながりやすい点にも注意が必要です。
また、生成AIやSNSを通じて誤情報が広がりやすくなったことで、根拠を示す情報発信も重要になりつつあります。出典、一次情報、担当者情報、更新日を記載したり、比較条件や実測に近い情報を加えたりすると、ユーザーに安心感を与えられます。外部データやAIツールを使う場合も、データの出所が信頼できるか、内容が古くないかを確認し、根拠を辿れるようにしておきましょう。
10. オンラインとオフラインを統合した顧客体験
オンラインとオフラインを分断せず、一貫した顧客体験を設計する取り組みもマーケティングトレンドとなっています。検索やSNSで下調べし、店で試し、後日ECで買うなど、購買がマルチチャネルをまたぐのが普通になったためです。このような購買行動に対応するために、在庫や会員ID、購入や閲覧の履歴などをつなぎ、どこからでも同じ情報に基づいた案内や手続きができる状態にしておく必要があります。
また、近年はオンライン上での体験を厚くし、オフラインの行動につなげる取り組みも広がっています。たとえば、メタバースやVRを活用して仮想空間で商品を見せたり、イベントに参加できる場を用意したりすると来店前に雰囲気をつかめるため、実店舗への訪問や購入の後押しにつながりやすくなります。
さらに、オンライン上の行動データを店舗での案内に反映する動きも進んでいます。ECで見ていた商品やサイズ、比較していた条件を踏まえて接客できれば、店頭での迷いが減り、購入に至る流れをつくりやすくなります。
11. サステナビリティを軸にしたマーケティング
顧客からの長期的な信頼を獲得するうえで、環境や社会課題への姿勢を示すサステナビリティを重視したマーケティングの重要性が高まっています。近年は商品やサービスの機能だけでなく、「どのように作られ、どのような価値観で提供されているか」を重視する消費者も増えています。実際、ボストンコンサルティンググループの調査によると、回答者3,300人のうち、66%が「環境負荷の少ない商品を購入したい」と回答しています。
事例としては、無印良品が再生紙を利用した商品展開や、食品ロス削減への取り組みを積極的に発信しているケースが挙げられます。ただし、実態を伴わない表現や過度な強調は、かえって信頼を損なうリスクがあります。取り組みの内容や範囲、背景を具体的に伝えることを意識しましょう。
12. リテールメディア
リテールメディアは、小売事業者が店内サイネージや自社アプリを広告メディアとして他社にも提供する仕組みです。会員IDや購買履歴などのデータを活用することで、Cookieに頼りにくい中でも配信先を絞ることができ、広告主は配信結果だけでなく購買への影響まで検証しやすい点が注目されています。小売側は広告収益を得ながら販促を強化でき、消費者側も関心に近い情報やクーポンを受け取りやすくなります。
リテールメディアの市場は拡大傾向にあり、CARTA HOLDINGS(カルタホールディングス)の調査では、国内市場規模は2024年の4,692億円から2028年に1兆845億円へ拡大すると見込まれています。実際、セブンイレブンでは約100社が出稿し、売上高が初年度の10倍規模になったと公表しています。ファミリーマートも「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」と「ファミペイ」の購買データを活用し、広告配信の実証で購買行動や認知拡大に好影響があったと公表しています。
まとめ
デジタル技術の進化に伴い、マーケティングの手法は日々更新されています。AIによる分析や自動化が進む一方で、顧客一人ひとりの行動や感情に寄り添う姿勢がこれまで以上に求められるようになりました。ショート動画やSNSでの交流、店舗とネットをつなぐ仕組みなど、顧客と接する場所も増え続けています。
しかし、こうした新しいトレンドを取り入れるだけでは不十分です。顧客とよい関係を築くうえでは、プライバシーを守り、環境へ配慮するといった対応も求められています。マーケティングトレンドを追うだけでなく、自社の目的に合った手法を選び、検証と改善を繰り返し行うことが重要です。
マーケティングトレンドに関するよくある質問
最新のマーケティング手法のトレンドは?
- AIを活用したマーケティングの自動化
- 1to1マーケティング
- 認知から購入までつなげるSNSマーケティング
- ショート動画・縦型動画マーケティング
- ソーシャルコマース
- コンテンツマーケティング
- AI検索への対策
- 音声・ビジュアル・動画検索に強いコンテンツ設計
- データプライバシーと情報の信頼性
- オンラインとオフラインを統合した顧客体験
- サステナビリティを軸にしたマーケティング
- リテールメディア
コンテンツマーケティングのトレンドは?
- 短時間で視聴・読了できるコンテンツ
- 人間味のあるコンテンツ
- 体験型のコンテンツ
- 専門性の高いコンテンツ
1to1マーケティングの事例は?
- ソニー株式会社:ユーザー一人ひとりの行動に合わせた情報を配信
- リンナイ株式会社:サイト行動から顧客を分類し、関心に合うメルマガで高い反応率を獲得
- 株式会社ディノス・セシール:カート放棄へのDM送付など、アナログとデジタルを融合させCVRを20%アップ
文:Yukihiro Kawata





