良い顧客体験は、ブランドロイヤルティや顧客生涯価値を高めるだけでなく、口コミなどによるブランド認知を促進するため、ビジネスの成長に重要なものとして注目されています。
本記事では、顧客体験とは何か、優れた顧客体験を提供するためのヒントや事例、改善のための数値化の方法やツールを解説します。

顧客体験(CX)とは
顧客体験とは、顧客が商品・サービスに興味を持ってから購入・利用するまでの接点で生じる体験やその評価です。カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)とも呼ばれ、CXと表記されることもあります。

顧客体験向上がもたらすメリット
顧客維持とブランドロイヤルティの向上
顧客体験を向上させ顧客満足度を高めることで、リピート顧客の増加やロイヤルティ向上が期待できます。商品やサービスの質や価格だけでなく、ブランドそのものへの満足度が高まることで、競合他社への乗り換えなどが少なくなります。
売り上げの増加
73%の顧客が体験自体のクオリティーが商品を購入するかに直接影響すると回答している調査結果(英語)もあるように、顧客体験を向上させることで客単価の向上やカゴ落ちの防止につながり、売り上げの増加が見込めます。
口コミによるブランド認知度の向上
満足度の高い体験をした顧客がSNSで情報発信したりレビューを投稿したりすることで、ブランド認知度が高まります。また、一般消費者による口コミはカスタマーボイスとして他の消費者へ与える影響が大きいため、ブランドを信頼してもらいやすなります。

優れた顧客体験に必要な要素
- いつでもスムーズに使える快適さ:サイトスピードや支払方法の柔軟性、問い合わせ対応、トランザクションメールなどのあらゆる接点がスムーズで、顧客が不便さを感じない。
- シームレスで一貫したカスタマージャーニー:実店舗やネットショップ、カスタマーサポートなど、どのチャネルでも一貫した体験ができる。
- パーソナライゼーション:顧客に合わせたおすすめの表示やメール案内など、パーソナライズした体験を提供する。
- 顧客のニーズを読み取ったサービス:問題が発生する前に顧客のニーズに対処し、よくある質問ページや問い合わせ窓口などを提供する。
- オリジナリティ:魅力的なデザインのウェブサイトやきめ細かいサービスなど、競合他社と差別化できる魅力がある。
顧客体験を数値化する方法
実際に自社サービス・商品がどのような顧客体験を提供しているか、取り組みが効果的かどうかは、以下のような計測方法で測定できます。
カスタマーエフォートスコア(CES)
カスタマーエフォートスコア(顧客努力指標)は、顧客がビジネスとの接点で最終目的にたどり着くまでにどれだけの努力を要するかを指す指数です。
サービス利用後やカスタマーサポートに連絡があった後などに実施することが多く、質問に対して「まったく努力しなかった」から「非常に努力した」までの7段階でアンケートをとります。
例えば、カスタマーサポートの場合、顧客がどのように問い合わせをし、どれだけ簡単に問題解決にたどり着けたかなどをCESで評価します。
この指標を活用することで、担当者の対応が顧客にとって親切なものであったか、労力のかかるものだったかを確認でき、課題となっている部分を改善することで顧客体験を向上させられます。
ネットプロモータースコア®(NPS®)
ネットプロモータースコア®は、商品やサービスに対する顧客の愛着や信頼を測る指標です。
顧客の意見を計測するために多くの企業が使用する指標で、商品やサービスの購入・利用後にアンケートをとります。
商品やサービスをどの程度他の人に薦めたいかを0〜10点で評価してもらい、その回答をもとにスコアを算出します。回答は1から10の点数で評価され、0〜6点を付けた人・7〜8点を付けた人・9〜10点を付けた人で分類し、「9〜10点」の割合から「0〜6点」の割合を引きNPSを計算します。
以下は、楽天グループが行うNPS調査の例です。
楽天グループはNPS®調査に特化したチームを社内に設け、顧客体験の向上に努めています。独自のRelative NPS(対競合社と比較したNPS値)を設定し、どのように顧客体験が改善できるかを実用化しています。
顧客満足度スコア(CSAT)
顧客満足度スコア(CSAT)は、顧客の商品・サービスに対する全体的な満足度を計測するスコアです。
世界的な標準指標として使われており、競合他社との比較調査やベンチマークの設定でも活用できます。顧客の購入後にアンケートなどで送信できる調査で、自由記述型の質問も含まれます。
解決までの時間(TTR)
解決までの時間(TTR)は、カスタマーサポートが問題を解決するまでかかる時間を計測するものです。
TTRが長くなるほど、顧客の待ち時間が長くなるため、総合的に顧客体験がネガティブになってしまっている可能性が高くなります。
TTRは初回解決率(FTR)と組み合わせることで、初回のやり取りで解決できた問い合わせと複数のやり取りが必要だった問い合わせの割合がわかり、サポートチームがどれくらい効率的に問題を解決できているかを確認できます。

顧客体験を改善するコツ
- テクノロジーを活用する:AIによるパーソナライゼーションやチャットボットなどを導入すると、顧客対応のスピードアップや効率化が図れたり、より顧客の好みやニーズにあった体験を提供したりできます。
- オムニチャネル化する:ウェブサイトと実店舗だけでなく、SNSなどあらゆるチャネルを統合してオムニチャネルマーケティングを実施することで、顧客がデバイスやチャネルを切り替えても情報が引き継がれるなど、スムーズに利用できるようになります。
- 顧客アンケートをとる:顧客アンケートやインタビューで顧客の声を集めることで、顧客の視点に立った改善策をたてられます。また、購入商品に同梱物としてアンケート用二次元コードを記載したカードを入れ、回答者へのギフトなどを用意することで、それ自体が顧客体験向上につながります。
- 従業員の意見を取り入れる:問い合わせ対応や接客などで日々顧客と接する従業員は、顧客がどのようなサービスを求めているかをよく理解しているため、定期的に意見やアイデアを聞くことで、効果的な改善につなげられます。
顧客体験向上に役立つツール
Qualtrics
Qualitrics(クアルトリスク)は、一つのプラットフォームで、顧客体験だけでなくサポート対応情報や従業員満足度などを総合的に管理できるCXツールです。
最新AIを搭載したアンケートで顧客体験を測定することもでき、データ分析を行って効率よく顧客体験を向上させられます。専門家が設計したアンケート調査や質問テンプレートもあるため、すぐに調査を開始できます。
B→dash
B→dash(ビーダッシュ)はコンテンツ作成やサイト表示まで、直感的な操作で設定できるツールです。顧客体験改善施策の成果をレポートで確認することもできます。
初期導入から施策分析やデータ構築まで丁寧に対応してくれるなどサポートも行き届いているほか、第三者機関によるセキュリティ認証を取得しているため、顧客体験改善のための対策を安心して始められます。
Zendesk
Zendesk(ゼンデスク)は、あらゆるチャネルからの問い合わせを一元管理できるツールです。
担当者が簡単に問い合わせの背景情報にアクセスできるため、質の高いカスタマーケアを提供し顧客体験を高めることができます。
さらに、Zendesk AIを活用すれば、問い合わせを自動で解決できるため、顧客に必要なサポートを即座に提供することもできます。
顧客体験向上の成功事例
カインズ
ホームセンターブランドのカインズと顧客との接点は、それまで店頭でのワークショップやイベントなどオフラインが中心でした。そこで、DIYを楽しむさまざまな世代をつなげる「CAINZ DIY Square」をオープンし、オンラインでも情報共有ができるコミュニティを開設しました。
オンラインでは「作品ギャラリー」や「みんなに質問」など、顧客が自由に情報発信できる場を設けて顧客同時やカインズスタッフとのつながりを深め、オフラインではワークショップを開催してDIY好きの顧客が実際に店舗へ足を運ぶ機会を作るなど、オンラインとオフラインを有効活用してロイヤルティの向上だけでなく売り上げや潜在顧客の獲得にもつなげています。
スターバックス
店舗での体験をメインとするスターバックスでは、デジタル施策を通して顧客体験のさらなる向上を目指しました。
期間限定のデジタルお花見体験や、店内も含めどこからでもオーダーできるモバイルオーダーの導入など、スターバックスでしかできない体験やスムーズなオーダー体験を提供することで、顧客満足度やロイヤルティを高めています。
さらに、2024年からは専用アプリや会員登録不要でモバイルオーダーできるサービスの対応店舗を全国へと広げるなど、より多くの顧客に良質な顧客体験を提供できるよう改善を続けています。
SOÉJU
D2CアパレルのSOÉJU(ソージュ)は、コミュニケーションと顧客理解を大切にすることで顧客体験の改善策を見つけ出しました。
オンラインでの試着のほか、自社の予約制サロンや百貨店でのポップアップストア、出張型サロンの開催などで売らない試着室を提供していましたが、完全予約制である点がネックであるというフィードバックを受け、自社サロンを予約なしで利用できるものへとリニューアルしました。
無料で利用できる試着室での販売はしないものの、QRコードを使って簡単に購入できるようにすることで、顧客体験を維持しつつ機会損失も防いでいます。
まとめ
優れた顧客体験を提供することは、長期的に顧客の離脱率低下や、ロイヤルティ向上へつながるため、ビジネスにとって重要なマーケティング戦略の一つとなっています。
この記事で紹介した顧客体験の測定方法やツールを活用して、自社商品・サービスやプラットフォームの顧客体験を最適化し、収益につなげていきましょう。
顧客体験に関するよくある質問
カスタマーエクスペリエンスとは?
カスタマーエクスペリエンスとは、顧客体験(CX)とも呼ばれ、顧客がブランドと接する機会やその評価のことです。
顧客体験価値とは?
顧客体験価値とは、顧客が商品やサービスを知る段階から購入後までの全過程で、その商品やサービス、ブランドに対して感じる総合的な価値のことです。
カスタマーエクスペリエンスを向上させて成功した事例は?
- ホームセンターのカインズ:オンライン・オフラインで顧客同士やスタッフと情報共有できる場を設け、ロイヤルティの向上、来店数の増加、潜在顧客の獲得につなげています。
- スターバックス:デジタルお花見体験やモバイルオーダーなど、スターバックスでしかできない体験やスムーズな購買体験を提供し、顧客満足度やロイヤルティを高めています。
- SOÉJU:顧客のニーズに応えて予約なしで利用できる試着室をオープンし、その場でQRコードで購入できるようにすることで、顧客体験を維持しつつ機会損失も防いでいます。
顧客体験と顧客サービスの違いは?
顧客体験と顧客サービスは、対象とする範囲が異なります。顧客体験が商品・サービスを顧客がみつけた最初の段階から、購入後のアフターサービスやレビューの投稿まで、顧客とのすべての接点とチャネルを対象とするのに対し、顧客サービスは、顧客からの問い合わせやクレームを対象とします。
文:Akiko Suzuki





