カスタマーサービスは、顧客対応を担うだけでなく、売上やリピート購入にも関わる重要な要素です。実際に、2024年のSalesforceの調査(英語)によると、「優れたカスタマーサービスを受けるとまた購入したいと感じる」と答えた人は88%にのぼりました。
商品そのものだけでの差別化が難しいECでは、問い合わせ対応から購入後のフォローまでを含む一連のカスタマーケアが重要になります。顧客対応の質が高まることで、ブランドロイヤルティの醸成につながり、顧客生涯価値(LTV)の向上も期待できます。
この記事では、カスタマーサービスの意味や役割、優れた対応のポイントについて解説します。
カスタマーサービスとは
カスタマーサービスとは、顧客へのサポートを行う職種や部署のことです。購入時には、注文確認や決済方法の案内、配送ポリシーや送料の説明などを行い、購入後は商品に関する問い合わせ対応、返品・交換の受付、配送トラブルへの対応などを担うのが一般的です。
カスタマーサービスは、単なる問い合わせ対応ではありません。購入前から購入後までの顧客体験を支える役割があり、顧客満足度の向上や良好な顧客関係の構築、継続利用にもつながります。特にECでは対面で接客できない分、商品ページの情報、問い合わせ導線、回答のわかりやすさなど、サポート全体の設計が重要になります。
カスタマーサービスとカスタマーサポート、コールセンター、ヘルプデスクの違い
カスタマーサービスが顧客対応全体を表す用語である一方、カスタマーサポートやコールセンター、ヘルプデスクは、その一部を担う役割や窓口を示す呼称として使われることが多いです。それぞれ次のような業務を担っています。
- カスタマーサポート:使い方の案内、返品・交換、不具合対応などの個別サポート
- コールセンター:電話での注文受付や問い合わせ対応を担う窓口
- ヘルプデスク:設定方法やトラブルなど、専門的な問題解決を行う窓口

カスタマーサービスの4つのタイプ
- 対面対応:店舗や窓口で直接案内する方法です。表情や反応を見ながら説明できるため、細かな対応が必要な場面で効果的です。
- 電話対応:問い合わせや注文、相談に電話で対応する方法です。その場でやり取りできるため、急ぎの確認や複雑な内容の説明に役立ちます。
- オンライン対応:メール、チャット、SNS、問い合わせフォームなどを通じた対応です。近年は、InstagramやXなどを通じて顧客対応を行うSNSカスタマーサービスも増えています。ECでは、すぐに相談しやすいライブチャットサポートや、チャットボットを取り入れるケースもあります。
- セルフサービス:FAQ、ヘルプページ、動画マニュアルなど、顧客が自分で解決できる仕組みです。問い合わせ前に疑問を解消できれば、顧客の負担だけでなく運営側の負担も減らせます。
ECでは特にオンライン対応とセルフサービスの充実が重要です。よくある質問、返品方法、配送状況の確認方法などを整理しておけば、顧客は問い合わせ前に自己解決しやすくなり、運営側の負担も減らせます。

優れたカスタマーサービスの特徴10選
- コミュニケーション力がある
- 傾聴力がある
- 顧客視点で対応できる
- 正確かつ迅速に処理できる
- 商品やサービスへの理解が深い
- 複数の対応を整理して進められる
- 最後までフォローする
- 顧客が自己解決できる環境を提供できる
- 顧客の声を改善に活かしている
- 目標を意識して継続的に改善している
1. コミュニケーション力がある
優れたカスタマーサービスを提供するには、顧客の要望や悩みを正確にくみ取り、わかりやすく伝えることが欠かせません。電話、メール、チャットなど、どのチャネルでも相手に伝わる言葉を選び、誤解のない案内ができることが大切です。
2. 傾聴力がある
顧客の話を最後まで聞き、表面的な質問だけでなく、背景にある困りごとまで理解しようとする姿勢も重要です。特にクレーム対応では、途中で話を遮らず、まずは状況を丁寧に把握することが、適切な解決につながります。顧客の声に真摯に耳を傾け、顧客の気持ちや立場に寄り添った対応ができれば、顧客満足度が高まる可能性があります。
3. 顧客視点で対応できる
企業側の都合やマニュアルだけで判断するのではなく、顧客が何に困っているのか、何を求めているのかを起点に考えることが大切です。顧客視点で対応することで、本当に必要な案内やサポートがしやすくなります。
4. 正確かつ迅速に処理できる
状況をすばやく整理し、必要な案内や判断を正確に行えることも、優れたカスタマーサービスの特徴の一つです。マニュアルにはない想定外の対応が求められるケースでも、顧客の困りごとをしっかりと把握し、適切かつ迅速に問題解決に導くことが重要です。
また、カスタマーサポートだけでは対処できないと判断した場合は、適切な部署へスムーズにつなげることも求められます。
5. 商品やサービスへの理解が深い
顧客の疑問や不安に適切に答えるには、自社の商品やサービスについて十分に理解している必要があります。知識があるだけでなく、それを専門用語に頼らず、相手に合わせてわかりやすく説明できることが大切です。
6. 複数の対応を整理して進められる
カスタマーサービスでは、複数の問い合わせを受けながら、情報確認や入力、引き継ぎなどを同時に進める場面も少なくありません。対応の質を落とさず、優先順位を判断しながら進められることが、安定した顧客対応につながります。
7. 最後までフォローする
優れたカスタマーサービスは、返答して終わりではありません。すぐに解決できない場合でも、途中経過や見込みを伝えながら、問題がきちんと解消するまでフォローすることが信頼につながります。顧客に「きちんと対応してもらえた」と感じてもらえるかどうかは、この姿勢に大きく左右されます。
8. 顧客が自己解決できる環境を提供できる
FAQやヘルプページ、ガイド記事などを用意し、顧客が自分で解決しやすい環境を整えることも、優れたカスタマーサポートに欠かせません。顧客の手間を減らせるだけでなく、問い合わせ件数の削減にもつながります。
9. 顧客の声を改善に活かしている
顧客の不満や要望を改善の機会と捉えることで、カスタマーサービスの質の向上につながります。問い合わせ内容やクレームをその場限りで終わらせず、商品ページ、FAQ、配送フロー、対応品質の改善に活かすことで、よりよい顧客体験をつくりやすくなります。
10. 目標を意識して継続的に改善している
KPIを設定し、目標達成度を数値で定期的に確認することで、データに基づいてカスタマーサービスを管理できます。応答時間、解決率、顧客満足度などの指標を確認しながら改善を続けることで、安定した対応品質を保ちやすくなります。数字と顧客の声の両方を見ながら見直していくことが大切です。

カスタマーサービスでよく使われる指標とその改善方法
平均応答時間
顧客からの問い合わせに最初の返答をするまでの平均時間です。問い合わせを受けた時刻から最初に返答した時刻までを記録し、一定期間の平均を出して測ります。返答が遅い場合は、よくある質問への回答テンプレートを用意したり、問い合わせの振り分けを見直したりすると改善につながります。
応答率
受けた問い合わせのうち、実際に対応できた件数の割合です。たとえば電話なら「応答件数 ÷ 着信件数 × 100」で求めます。数値が低い場合は、問い合わせが集中する時間帯を把握し、人員配置や対応チャネルを見直すことが有効です。
解決率
問い合わせに対して、実際に問題を解決できた割合です。一般的には「解決数 ÷ 問い合わせ数」で計算します。解決率が低い場合は、判断に迷いやすいケースの対応ルールを整えるほか、部署全体でナレッジを共有し研修を充実させると改善が図れます。
ワンストップ処理率
できるだけ少ないやり取りで問題を解決できた割合です。1回の対応、または最小限のやり取りで解決できた件数を集計し、全体に対する割合を見ます。数値を上げるには、最初の対応で必要な情報をまとめて確認し、引き継ぎや確認の往復を減らすことが大切です。
顧客努力指標(CES)
顧客が問題を解決するまでに、どれだけ手間や負担がかかったかを測る指標です。問い合わせや返品手続きのあとに「どのくらい簡単でしたか」といったアンケートを取り、5段階や7段階で評価して平均点や肯定的回答の割合を集計します。FAQやヘルプページを見直し、顧客が少ない手間で自己解決できるようにすると改善が狙えます。
目標達成率(GCR)
顧客の目的やニーズをどれだけ満たせたかを示す指標です。「この質問は役に立ちましたか」「知りたかった情報は見つかりましたか」といったアンケートや、FAQの閲覧後にそのまま購入や申し込みにつながった割合などをもとに計測します。数値が低い場合は、案内の内容や導線が顧客の目的に合っていない可能性があるため、FAQの内容や導線設計、案内文を見直しましょう。
エスカレーション回数
問い合わせ対応の途中で、上司や他部署に引き継いだ(エスカレーションした)回数です。一定期間の総エスカレーション回数を集計し、問い合わせ件数に対する割合で見ることが一般的です。回数が多い場合は、現場だけでは判断しにくいケースが多い、または必要な知識やルールが不足している可能性があります。よくある引き継ぎパターンを整理し、マニュアルや研修を見直すと改善が図れます。
顧客満足度(CSAT)
顧客が対応にどれくらい満足したかを表す指標です。「今回の対応はいかがでしたか」といったアンケートを5段階評価などで行い、満足以上を選んだ回答の割合を集計して計測するのが一般的です。数値を上げるには、返答の早さだけでなく、説明のわかりやすさや最後までフォローする姿勢もあわせて見直すことが大切です。
まとめ
カスタマーサービスは、購入前から購入後までの顧客体験を支える重要な役割を担っています。特にECでは、問い合わせのしやすさや説明のわかりやすさ、トラブル時の対応が、ストア全体の印象やリピート購入に大きく影響します。
優れたカスタマーサービスを実現するには、顧客視点でわかりやすく対応し、FAQやヘルプページを整えるほか、KPIを設定し数値を見ながら改善を続けることが大切です。まずは、よくある問い合わせを整理して、FAQページを見直すなど取り組みやすいところから始めてみてください。
カスタマーサービスに関するよくある質問
カスタマーサービスの改善は何から始めればいい?
まずは、平均応答時間や解決率、顧客満足度などの指標を確認し、どこに課題があるかを把握することが大切です。そのうえで、問い合わせ対応が遅いならテンプレートや振り分けを見直す、顧客の負担が大きいならFAQや導線を整えるなど、課題に合わせて改善を進めると効果が出やすくなります。
問い合わせ対応にかかる時間を短くするには?
まずは、どんな問い合わせが多いのかを整理するところから始めるのがおすすめです。よくある質問が決まっているなら、FAQにまとめておくと負担を減らせます。FAQの整備が難しい場合は、回答文のひな形を用意しておくだけでも、問い合わせ対応の時間短縮につながります。
カスタマーサービスで追うべきKPIは?
- 平均応答時間
- 応答率
- 解決率
- ワンストップ処理率
- 顧客努力指標(CES)
- エスカレーション回数
- 顧客満足度(CSAT)
- 目標達成率(GCR)
文:Taeko Adachi





