これまでB2Bビジネスでは、オンラインでの購買体験がB2Cほど重視されてきませんでした。しかし、ミレニアル世代やZ世代が企業の意思決定に関わるようになった現在、B2BでもECサイトを活用した取引や注文の重要性が高まっています。長く事業を続けてきた企業の間でも、法人顧客がオンラインで商品を探し、注文し、再注文できる環境を整える動きが広がっています。
B2B移行戦略では、B2B ECに適したECプラットフォームを選ぶだけでなく、自社の運用方法を見直し、必要に応じて業務プロセスそのものを変えていくことが欠かせません。複雑な業務プロセス、手作業に頼った受注管理、煩雑なデータ管理などを見直すことで、新しいプラットフォームの価値を引き出しやすくなります。
この記事では、ECプラットフォームのB2B移行戦略を成功させるポイントを解説します。

現状確認:既存の業務プロセスを棚卸して課題を把握する
B2B移行を進める際は、まず長年使ってきた業務プロセスやシステムを棚卸しし、現在の顧客の購買行動に合っているかを確認しましょう。eコマースが発展した現在では、過去に構築した仕組みをそのまま引き継ごうとすると、機能同士のつながりが複雑になってしまうことがあります。
たとえば、注文履歴の確認、再注文の導線、商品検索、会社単位のアカウント管理などは、B2B ECの使いやすさに直結する要素です。こうした機能が整っていないと、買い手は必要な商品を探したり、過去の注文内容をもとに再購入したりするのに手間がかかります。その結果、社内でも、問い合わせ対応や手作業での確認が増えやすくなります。
老舗アロマブランドである生活の木では、Shopify Plusの導入前、B2B事業においてFAXや電話による注文対応、FAXでの法人登録、債権管理など、手作業を前提とした業務プロセスが残っていました。こうした運用は、これまでの取引を支えてきた一方で、注文処理や登録確認、請求・回収に関わる社内負担を増やす要因にもなっていました。
同社はShopify Plusへの移行をきっかけに、法人登録をFAXからWeb申請に切り替え、一括注文フォームを導入しました。その結果、FAX注文とそれに伴う電話問い合わせはゼロになり、未回収債権もゼロになりました。
このように、B2B移行戦略では、既存の業務をそのまま新しいプラットフォームに移すのではなく、注文、登録、請求、再注文といった一連の業務を棚卸しし、顧客にも社内にも使いやすい形へ整えることが重要です。

効率化:新しいプラットフォームを業務効率化の足がかりにする
新しいECプラットフォームを導入するだけで、長年の業務課題がすべて解決するわけではありません。既存の複雑な業務プロセスをそのまま新しい環境に移してしまうと、システムは新しくなっても、手作業や確認作業、問い合わせ対応などの負担が残ることがあります。B2B移行戦略で大切なのは、プラットフォームの機能を活かし、社内業務と顧客対応の両方を効率化していくことです。
まずは、現在の業務のなかで効率化できるものを探しましょう。たとえば、次のような業務は、ECプラットフォームの機能やシステム連携によって簡略化できる場合があります。
- 手作業で行っている注文内容の確認
- 個別に対応している書類発行
- 担当者を経由した再注文の受付
- 複数のシステムへの二重入力
- メールや電話で行っている在庫確認
また、顧客が自分で商品を探し、注文し、必要な書類を確認できるセルフサービスの仕組みを整えることも重要です。顧客自身で確認できる情報が増えれば、問い合わせ対応や確認作業にかかる負担を減らしやすくなります。
たとえば、店舗什器を扱うSHOP COPACK(ショップコパック)は、B2B向けの商品をカテゴリごとに整理し、顧客が目的に合う商品を探しやすいECサイトを構築しています。商品カテゴリや画像を整理し、類似商品を比較しやすくすることで、顧客が自分で商品を選びやすい導線を整えています。こうしたセルフサービスの仕組みは、顧客の利便性を高めるだけでなく、社内の商品案内や問い合わせ対応の負担軽減にもつながります。
過去の前提にとらわれない
B2B移行で業務効率化を進めるには、「新しいプラットフォームに移せば自然に効率化できる」という考え方から離れることも大切です。長年続いてきた業務のなかには、古いシステムの制約や当時の運用方法に合わせて残っているものもあります。そうした業務をそのまま移してしまうと、新しいプラットフォームの価値を十分に活かせない場合があります。
移行時には、次のような視点で業務を見直してみましょう。
- B2BのEC移行を一度やったら終わりのプロジェクトとして扱っていないか
- 期待した成果が出ない理由を、プラットフォームの機能だけに求めていないか
- 顧客体験や業務プロセスを、移行後も継続的に改善できる仕組みになっているか
- 今回の移行によって「何をシンプルにするのか」が明確になっているか
B2B移行戦略では、プラットフォームの機能だけでなく、その機能をどのように活かすかという視点が重要です。既存の業務をシンプルにし、移行後も改善を続けられる状態に整えることで、顧客にとっても社内にとっても使いやすいB2B ECを構築しやすくなります。

再設計:ゼロベースで考え、段階的に改善する
B2B移行は、業務プロセスをゼロベースで見直す機会でもあります。「もし今からこの事業を始めるなら、どのような販売導線や業務プロセスにするか」を考えてみましょう。現在の業務と理想の状態を見比べることで、簡略化できる業務、標準機能で置き換えられる業務、新しい仕組みに移行できる業務が明確に見えてきます。
既存業務に合わせてシステムを複雑にするのではなく、プラットフォームの機能を活かして業務を整える視点も重要です。
必要最低限の機能から始める
一度で完成形を作り切るのではなく、まずは必要最低限の機能から始め、実際の運用を通して改善を繰り返していくという考え方があります。
はじめの段階では、すべての例外対応や細かなカスタム機能を盛り込むよりも、顧客が商品を探し、注文し、必要な情報を確認できることを重視した機能を盛り込みます。そのうえで、実際の利用状況や社内からのフィードバックを見ながら、チェックアウト、割引、システム連携、承認フローなどを段階的に追加していきます。このように段階的に進めることで、移行時のリスクを抑えながら、早い段階で運用を始めやすくなります。
たとえばダイソーは、まずB2Bを想定したまとめ販売のECサイトから始め、その後、顧客から寄せられた「1個から購入したい」という声に応える形でB2C向けのネットストアも開設しました。さらに、先行していたB2Bサイトも、Shopifyの上位プランであるShopify Plusへ移行し、それによってB2BとB2CのECサイトを1つのシステムで運用できる体制を整えています。その結果、2022年と2023年の比較において、B2Bサイトの売上高が250%にまで成長しました。段階的にECの対象や機能を広げながら、法人顧客と一般顧客それぞれに合った購買体験を整えた事例といえます。B2B移行戦略でも、最初から完璧な形を目指すのではなく、中核となる購買体験を整えたうえで、顧客の反応や社内の運用状況を見ながら機能を広げていくことが大切です。
まとめ
B2B移行戦略を成功させるには、新しいECプラットフォームを導入するだけでなく、既存の業務プロセスや顧客体験をあわせて見直すことが大切です。長年使ってきた仕組みを棚卸しし、効率化できる業務やシンプルにできる手順を整理することで、顧客にも社内にも使いやすいB2B ECを構築できるようになります。
また、B2B移行は一度で完成形を作るものではありません。まずは必要な機能から始め、顧客の反応や社内の運用状況を見ながら改善を重ねることで、実際の業務に合ったECサイトへと育てていけます。
Shopifyは、B2BとB2Cの販売を同じ基盤で管理しながら、システム連携や拡張機能も活用しやすいECプラットフォームです。法人顧客向けの購買体験を整え、社内業務の効率化も進めたい場合は、Shopifyを活用したB2B移行を検討してみましょう。
B2B移行戦略についてのよくある質問
ECのB2B移行で最初に見直すべき業務は何ですか?
まずは、手作業が多い業務や、顧客からの問い合わせが発生しやすい業務を見直しましょう。たとえば、FAXや電話での注文受付、手作業での注文確認、個別の書類発行、在庫確認、再注文への対応などです。こうした業務は、ECプラットフォームの機能やシステム連携によって簡略化できる場合があります。
B2B移行は最初からすべての機能を整えるべき?
最初からすべての機能を整える必要はありません。まずは、主要な取引先や商品、基本的な注文フローなど、必要最低限の機能から始めるという考え方があります。実際の利用状況や社内の運用状況を見ながら、割引、承認フロー、システム連携などを段階的に追加していくと、無理なく改善が進められます。
B2B ECとB2C ECは同じECプラットフォームで管理できる?
一元管理が可能です。B2B ECとB2C ECは、価格設定、注文単位、支払い条件、購入までの流れが異なりますが、法人顧客向けと一般顧客向けで入り口や購入導線を分けて運用することが可能です。
Shopifyでは、B2BとB2Cの販売を同じ基盤で管理しながら、それぞれの顧客に合った購買体験を整えることができます。商品情報、在庫、注文、顧客情報をまとめて管理したい企業に向いています。




