SNSは、企業の規模に関係なく、自社の取り組みや想いをそのまま伝えられる身近な情報発信の手段です。特別な知識や大きな予算がなくても始められるため、中小企業など意思決定のスピードが早いスモールビジネスにとっては、相性のよいデジタルマーケティングの手法でもあります。
本記事では、中小企業にとってのSNSマーケティングのメリットや始め方を、SNSを使用したマーケティング成功事例とあわせて紹介します。

中小企業がSNSを活用すべき理由
ブランディングに活用できる
SNSは、企業や商品・サービスへの共感や信頼を育てるための有効なブランディング手段です。
大企業では発信内容に一定のルールや調整が必要になることが多い一方で、中小企業では、経営者やスタッフが関わる現場の取り組みや商品が生まれる背景を、自社の言葉で伝えやすい傾向があります。中小企業こそ、SNSを活用して企業の想いや価値観をターゲットオーディエンスに伝え、継続的に対話をすることで、企業やブランドへの信頼を築くことができます。
集客や売上につながる可能性がある
SNSは、集客や売上のきっかけを生み出すマーケティングチャネルとしても活用できます。投稿がシェアされたり、検索結果やおすすめに表示されたりすることで、これまで企業や商品を知らなかった潜在顧客にリーチできます。
SNSを通じて商品やサービスに興味を持った人が、自社サイトを訪れたり、実店舗に足を運んだりする流れを作ることで、集客や売上につなげることができます。
採用活動に活用できる
人口減少が進み、中小企業の採用がますます難しくなる中、SNS運用は企業の魅力や働く人の様子を伝える効果的な手段です。特に、アットホームな社風や意思決定の速さ、社員の裁量の大きさといった中小企業ならではの強みを、SNSを通じて発信できます。
さらに、2025年にマイナビが発表した調査によると、2026年卒の就活生のうち68.2%がSNSで企業情報を収集しています。SNSを通じて企業の姿を伝えることで、事前に企業の価値観や働く環境を理解した上で応募してもらえるため、入社後の定着率を高める効果も期待できます。
始めやすく、費用対効果が高い
多くのSNSは無料でアカウントを作成でき、リソースの限られた中小企業でもコストをかけずに運用を始められます。広告出稿と比べるとコストを抑えやすく、限られた予算の中でも継続的な情報発信が可能です。
投稿への反応を見ながら内容や頻度を自社で改善できる点は、SNSならではの強みといえるでしょう。
顧客と信頼関係を築きやすい
SNSは、顧客との距離を縮め、信頼関係を築くためのツールとしても有効です。コメントやDMなどのダイレクトマーケティングを通じて直接やり取りができるため、企業を身近に感じてもらいやすくなります。
オーディエンスと対話を積み重ねることで、長期的な信頼関係の構築につながります。

中小企業向けSNS運用の始め方
1. SNS運用の目的を決める
自社のマーケティング戦略を考えるうえでも、まずはSNSを使って何を実現したいのかを明確にしましょう。目的が定まることで、投稿内容の方向性がぶれにくくなります。
- ビジネス成果の最適化:新規顧客の獲得、リピート購入の促進、来店促進
- ブランド価値の向上:ブランディング、エンゲージメントの向上、採用強化
2. ターゲットとペルソナを具体化する
次に、誰に向けて発信するのか、ターゲットとペルソナを設定します。想定する顧客像を具体化することで投稿内容を考えやすくなります。
ターゲットは、年齢・地域・家族構成・興味関心などの属性で分類された集団です。そして、その中から製品やサービスを実際に利用する典型的な人物像としてペルソナを設定します。
例えば、圧力鍋のターゲットとペルソナは次のように設定できます。
- ターゲット:30〜40代の子育て中の女性、共働き、家事の時短や効率化に関心がある
- ペルソナ:大手食品メーカー勤務、夫(会社員)と5歳の子どもの3人暮らし、平日は仕事と育児で時間に追われがち、料理は好きだが平日は時短を優先したい
年齢や性別だけでなく、ライフスタイルや関心ごと、どのような悩みを抱えていそうかまでイメージできると、伝える内容に一貫性が生まれます。
3. 自社に合ったSNSを選ぶ
SNSにはそれぞれ特性があり、向いている業種や目的も異なります。まずは目的にあったSNSがどれか、ひとつ選ぶことをおすすめします。SNSごとの特性は次のとおりです。
- Instagram(インスタグラム):画像や動画といったビジュアルを使ってブランドの世界観や商品の魅力を直感的に伝えやすいSNSです。
- X(エックス):拡散力とリアルタイム性に優れており、新着情報の発信やキャンペーン告知、タイムリーな話題づくりに向いています。
- TikTok(ティックトック):短い動画で気軽に情報を届けられる点が特徴で、商品紹介や仕事の裏側を自然に伝えることで、若い世代への認知拡大が期待できます。
- Facebook(フェイスブック):実名制を活かした信頼性の高い情報発信がしやすく、地域密着型のビジネスや、30代以上の層に向けた発信と相性が良いSNSです。
- YouTube(ユーチューブ):動画を通じて情報を丁寧に伝えられる点が特徴で、商品やサービスの詳しい説明、使い方の紹介、代表やスタッフの想いを伝えるコンテンツと相性がいいです。継続的に視聴されやすく、信頼感の醸成や理解促進につなげられます。
- note(ノート):文章を中心に、商品やサービスの背景、取り組みの経緯、考え方などをじっくり伝えられる、文章中心のSNSです。
- LINE(ライン)公式アカウント:既存顧客との継続的な接点づくりに強く、クーポン配布やお知らせ配信を通じて、リピートや再来店につなげやすいSNSです。
- LinkedIn(リンクトイン):BtoBの商品・サービスのプロモーションや、リクルーティングへの活用に適したビジネスに特化したSNSです。
4. 投稿内容の方向性を決める
何を投稿するかを毎回考えるのは負担になりやすいため、投稿内容の方向性をあらかじめ決めておくと運用が楽になります。例えば、次のようなSNS投稿アイデアがあります。
- 商品やサービスの紹介
- 制作や業務の裏側
- スタッフや日常の様子
- 顧客の声
5. 運用ルールを決める
SNSを安定して質の高い運用を行うためには、以下のようなルールを決めておくことも役立ちます。特に中小企業では、運用が特定の担当者に偏りやすいため、最低限のルールを共有しておくことが、属人化やトラブルの防止につながります。
- ユーザー管理:フォローバックやブロック
- 投稿:日時や頻度
- チェック体制:投稿内容の承認・ダブルチェック
- 投稿内容:トーン&マナー
- リアクション:「いいね」やコメントへの対応
- 炎上対策:炎上を防ぐための対策や緊急対応のルール
6. 無理のない頻度で継続する
SNS運用は、無理なく続けられるかどうかが重要です。自社の業務量や体制に合ったペースで継続することが、安定した運用につながります。無理なく継続するための工夫には以下があります。
- スケジュールを決めて運用を習慣化する
- 投稿テンプレートを用意する(例:画像+短いキャプション)
- 日常的にネタをストックしておく(例:商品の特長、利用者の声)
- 予約投稿ツールを活用する
7. 分析し改善する
SNS運用を開始したら、定期的にアカウント分析を行うことが重要です。投稿後は、管理ページから指標をチェックし「どんな投稿が見られやすいか」「どの内容に反応が集まっているか」を確認していくことで、改善点が見えてきます。
これらのデータをもとに、フォロワーにとって価値のある内容や最適な投稿タイミングを分析し、改善を重ねていくことが大切です。
SNS運用で確認しておきたい主な指標
- リーチ:投稿を見た人数です。どれくらいの人に情報が届いているかを把握できます。
- エンゲージメント:いいね、コメント、シェア、保存、DMなどの反応があった数です。投稿内容に対して、どの程度関心を持ってもらえているかの目安になります。
- エンゲージメント率:投稿を見た人のうち、反応した人の割合を指します。数が多くなくても、反応率が高ければ内容が合っている可能性があります。
- プロフィール閲覧数(アカウントビュー):投稿をきっかけに、企業やブランドに興味を持った人がどれくらいいるかを確認できます。
- リンクのクリック数:ECサイトや問い合わせページなど、次の行動につながっているかを見る指標です。
- フォロワー数:自社のフォロワー数の推移に加え、競合や業界平均と比較することで、パフォーマンスを把握できます。

中小企業がSNSを運用するコツ
動画を活用する
最近のSNSでは、動画コンテンツの重要性が高まっています。商品の使い方やサービスの利用シーンを示すことでユーザーの理解が深まり、購買意欲の向上が期待できます。さらに、既存顧客の声を動画で伝えることは、潜在顧客の獲得にも効果的です。
加えて、企業理念や従業員の想い、品質へのこだわりなどのブランドストーリーを発信することで、ブランドイメージの向上にもつながります。
ユーザーとコミュニケーションをとる
ユーザーからのコメントには「いいね」や丁寧な返信を行うことが重要です。また、自社・ブランド・商品・サービス名で検索し、関連投稿に積極的に「いいね」やコメントを返すことも効果的です。こうした双方向のコミュニケーションを積み重ねることで、エンゲージメント向上につながります。
炎上対応ルールを決めておく
炎上後の対応が不適切だと、さらなる被害や信頼低下につながるため注意が必要です。投稿を作成する際は、過去の炎上事例を参考に内容をチェックし、リスクを事前に抑えることが重要です。
また、炎上時の対応方針をあらかじめ社内で決めておくと、万が一の場合でも迅速かつ適切に対処できます。
法的なリスクを理解する
SNSの投稿内容には、法的な観点から注意すべきリスクがあります。
- 著作権侵害:キャラクター画像や楽曲を無断で投稿する
- 個人情報保護法違反:顧客の個人情報を同意なく掲載する
- 景品表示法違反:誤解を招く虚偽・誇大な広告を投稿する
中小企業のSNSマーケティング成功事例
1. かもしか道具店
かもしか道具店は、日常の中で使いやすい土鍋や器などを手がける陶器ブランドです。Instagram、Facebook、YouTubeを併用し、商品の使い方や、器のある暮らしの風景を発信しています。
商品写真だけでなく、実際の使用シーンや食卓の様子をリールとして投稿し、どんな場面で、どのように使われているかを、観た人がイメージできるようにしています。商品の背景にある考え方や、取り組みについての長いインタビューはYouTubeチャンネルに残すといった使い分けが行われているのも特徴的です。
2. snaq.me
snaq.me(スナックミー)は、無添加・ナチュラル素材を中心としたおやつを届けるサブスクリプションサービスです。SNSの中でも、YouTubeを活用した動画マーケティングが特徴的な事例です。
YouTubeでは、どんぐりとおやつが大好きな「りっす」というキャラクターを使ったかわいらしいショートアニメを発信しており、ブランドの世界観を親しみやすい形で伝えています。こうした動画が支持を集め、チャンネル登録者数は4,000人以上に達しています。
オーディエンスの興味を喚起するコンテンツを通してブランドに触れてもらい、自然な形で認知やファンづくりにつなげている点が特徴です。
3. 新田醸造
新田醸造は、長野県坂城町で味噌や甘酒などの発酵食品を手がける、江戸時代から続く老舗の醸造メーカーです。InstagramやLINEを中心に、日々の暮らしの中での味噌の使い方を発信しています。
Instagramでは味噌を使った簡単で時短になるレシピを1日おきに投稿し、2026年2月時点で1.4万人のフォロワーを獲得しています。公式LINEでもレシピの配信が行われていますが、トークにそのまま配信するのではなく、タップすると公式ECサイトに移動するような導線をつくっています。
商品の魅力を直接伝えるだけでなく、どう使えば生活に取り入れやすいかを、レシピなどの発信で具体的に示すことで、商品が生活にもたらす価値そのものをうまく発信している事例です。
4. LOWYA
LOWYA(ロウヤ)は、家具やインテリア雑貨を中心に展開するECブランドです。InstagramやTikTok、YouTubeなど複数のSNSを活用し、特にショート動画での発信が特徴的です。部屋のビフォーアフターをみせるといったTikTok活用術を駆使し、テンポがよく見やすいショート動画を数多く投稿しています。「おもしろ家具」「バズ家具集」「ルームツアー」「出張お部屋づくり」など、テーマ毎にプレイリストを分け、見やすい仕組みもつくっており、TikTokマーケティングの好例といえます。
まとめ
SNSは、特別なノウハウや大きな予算がなくても始められるため、中小企業にとって身近な情報発信の手段です。
SNS運用は、ブランディングや集客、採用、顧客との関係づくりなど、さまざまな場面で活用できます。大切なのは、完璧を目指すことではなく、自社に合った形で無理なく続けることです。実際の事例を見ても、自社のブランドに最適なSNSを選び、投稿内容を工夫しながら継続的に発信を続けています。
まずは目的とターゲットを整理し、伝えたいことから小さく発信を始めてみましょう。
中小企業のSNS活用についてのよくある質問
中小企業のSNSマーケティングではSNSはどれかひとつに絞ったほうがいい?
まったくSNSをやったことがなければ、まずはSNSをひとつ選んではじめてみるのがおすすめです。
目的やターゲットに合ったSNSを無理のない頻度で継続しながら、余裕が出てきたほかのSNSを併用すると、運用の負担を抑えつつ効果を広げられます。
フォロワーが少なくても、中小企業がSNSを続ける意味はある?
フォロワー数が少なくても、続ける意味はあります。多くの場合、SNSは時間をかけてフォロワーを獲得していくものです。。また、少人数でも、丁寧な発信ややり取りを重ねることで、来店や問い合わせ、採用などにつながるケースは少なくありません。
企業がSNSを運用する際の注意点とは?
- ターゲットに合ったSNSを選ぶ:目的やターゲットに最適なプラットフォームを選ぶことで、発信が届きやすくなります。
- 投稿後の反応を振り返る:いいねやコメント、保存数などの数値を確認せずに運用を続けると、改善のヒントを見逃しやすくなります。基本的な指標だけでも定期的にチェックすることが大切です。
- 無理のない頻度で継続する:投稿が少なすぎたり、途中で止まってしまったりすると、アカウントの存在を忘れられてしまうことがあります。続けられるペースを見つけることが重要です。
- 宣伝中心の内容にならないようにする:商品やサービスの告知だけでなく、背景や使い方、日常の様子なども交えることで、内容に広がりが生まれます。
- コメントやメッセージへの対応を大切にする:SNSは発信だけでなく、やり取りの場でもあります。利用者の声に答えることで、信頼関係の構築につながります。
中小企業がSNSで投稿するときに意識すべきポイントは?
フォロワーが価値を感じられるよう、以下のような内容になっているかを意識しましょう。
- 役に立つ:問題解決につながる情報や実用的なアドバイス
- 共感できる:読者の感情に響くストーリーや体験
- 関連性がある:ターゲット層の興味・関心に合った情報
- 信頼できる:正確で専門性のある情報
文:Taeko Adachi





