ECサイトの売上を伸ばす手法として、近年注目されているのがチャットコマースです。チャットボットやメッセージアプリを活用し、対話を通じて顧客に商品提案や問い合わせの回答が提供できます。
近年では、LINEなどのメッセージアプリの普及により、チャットを使った接客は多くの企業で導入が進んでいます。本記事では、チャットコマースの基本的な意味や種類、市場規模、導入方法、活用事例までをわかりやすく解説します。

チャットコマースとは
チャットコマースとは、チャットボットやメッセージアプリ、音声アシスタントなどの会話型ツールを活用し、顧客とのコミュニケーションを通じて商品販売や購買プロセスの支援を行うEC手法のことです。
企業はチャット上で顧客に対して質問回答や商品提案、購入サポートなどを実現できます。顧客はアプリ内で担当者やチャットボットと会話しながら商品情報の確認やレビュー閲覧、購入を進められるメリットがあります。AIチャットボット戦略と有人対応を組み合わせることで、リアルタイムでの顧客対応やパーソナライズされた購買体験も提供可能です。

チャットコマースを支える対話型AIシステムの市場規模
チャットコマースを支える対話型AIシステム市場は近年、高い成長が続いています。
IT市場の調査・分析を行うITRによると、国内の対話型AI市場は2024年度に12億9,000万円となり、前年度比46.9%増加したとされます。さらに、2029年度には55億円規模へ拡大すると予測されており、AIを活用した顧客対応への期待が高まっています。
接客や問い合わせ対応の自動化に加え、AI が自律的に商品を提案・購入を支援する、エージェント型コマースも今後期待されています。

チャットコマースの特徴
チャットコマースの特徴は、顧客とリアルタイムでコミュニケーションが取れる点です。チャットを通じて商品理解を深められるため、従来の一方通行型のECサイトよりもスムーズな購買体験を提供できます。
また、顧客一人ひとりのニーズや行動に合わせたパーソナライズ対応ができる点も特徴です。ECサイトにチャットサポートを導入することで、顧客満足度が向上し、継続的な関係構築が期待できるため、売上向上につながります。

チャットコマースの種類
AI型チャットボット
AI型チャットボットは、あらかじめ想定される質問と回答を学習させることで、顧客との会話を自動で行う仕組みです。botチャットの活用法としては、商品レコメンド、在庫確認、注文サポートなどがあり、ECサイトの接客の自動化が挙げられます
AI型チャットボットは、表現が異なる質問でも意図をくみ取り、適切な回答につなげられるため、商品や予約の案内、問い合わせ対応の効率化に適しています。さらに、24時間の接客を提供できるため、ユーザーの購買機会を逃しにくいメリットもあります。一方で、回答精度は事前学習や継続的な更新の質に左右されるため、導入後も継続的な改善が必要です。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型チャットボットは、あらかじめ設定された複数の選択肢や会話の流れに沿って案内を進める仕組みです。
ユーザーは表示された項目を選ぶだけで必要な情報にたどりつけるため、質問内容を整理したり、打ち込んだりする必要がありません。自由な会話を行うAI型とは異なり、FAQのような端的な問い合わせ窓口に効果的です。回答内容を標準化しやすく、案内品質をそろえやすい点が強みで、ECでは配送確認や返品方法、基本案内などに活用されています。
有人チャット
有人チャットは、AIチャットボットのような自動応答ではなく、顧客と担当者が直接やり取りする方式です。
定型回答では解決しにくい相談や、購入前の不安解消、細かな要望への対応に適しています。一方で、問い合わせ件数が多い場合は、人的リソースの確保が課題となります。有人チャットは、AIチャットボットで対応できなかった内容を引き継ぐ窓口として活用するなどの工夫が必要です。

チャットコマースの始め方
- チャットコマースの目的・KPIを決める
- チャットコマースのプラットフォームを選ぶ
- チャットコマースの戦略を設計する
- 会話フロー(シナリオ)を設計する
- チャットボットを設定・トレーニングする
- テスト・改善を行う
1. チャットコマースの目的・KPIを決める
まず、チャットコマースを導入する目的を明確にします。例えば問い合わせ対応の効率化や商品購入率、顧客満足度の向上などがあげられるでしょう。目的に応じて、CVRや問い合わせ対応時間などのKPIも設定するとより効果的です。
2. チャットコマースのプラットフォームを選ぶ
自社のターゲットや利用環境に応じて、導入するプラットフォームを選定します。LINEやInstagramなど日常的に利用されるチャネルが活用されるほか、ShopifyなどのEC独自のチャット機能を利用するケースもあります。
Shopifyストアでは、Shopify Inbox を利用することで、オンラインストア上にチャット機能を設置できます。顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応できるほか、クイック返信や自動メッセージの設定、顧客の閲覧状況や注文情報の確認などの機能があります。日本語に対応しているため、国内利用も可能です。
3. チャットコマースの戦略を設計する
チャットを使ってどのような顧客体験を提供するのかを設計します。商品提案、問い合わせ対応、購入サポートなど、チャットをどの場面で活用するのかを整理します。
4. 会話フロー(シナリオ)を設計する
顧客からの質問や行動を想定し、会話の流れを設計します。よくある質問、商品レコメンド、購入案内などをスムーズに案内できるフローを作成します。
5. チャットボットを設定・トレーニングする
シナリオをもとにECチャットボットを設定し、想定される質問や回答を登録します。AIチャットボットの場合は、回答精度を高めるために学習データを追加します。
6. テスト・改善を行う
実際の利用を想定してテストを行い、会話の流れや回答精度を確認します。導入後もデータを分析しながら改善を続けることで、顧客体験や購入率の向上につながります。
チャットコマースの活用事例
バルクオム(BULK HOMME)
バルクオム(BULK HOMME)では、公式LINEアカウントにWebサイトの入力フォームをチャット型に置き換える「GENIEE CHAT」を導入しました。
商品の案内や購入までの流れをチャット上で実現し、ユーザーが離脱しにくい導線を設計した点が特徴です。その結果、購入率を示すCVRが約1.5倍に向上しました。
リンツ(Lindt & Sprüngli Japan)
リンツ(Lindt & Sprüngli Japan)では、店舗ごとに運用していたLINE公式アカウントをブランド公式アカウントへ統合し、情報発信の一元化を進めました。その結果、広告を使わずに約3か月で友だち数15万人以上の増加を実現しています。
さらに、ユーザー属性に応じたセグメント配信や店舗への来店を促す施策を行うことで、商品提案やキャンペーン情報を最適なタイミングで届け、検討段階のユーザーに対して購買を後押しし、来店・購入の増加につなげています。
アサヒ飲料
アサヒ飲料では、LINE公式アカウントを活用して、企業として初めて「LINEプロモーション絵文字」を導入しました。
人気キャラクターとコラボした絵文字を配布することで、特に10〜20代の若年層との接点づくりに成功しています。その結果、友だち追加数が大きく伸びただけでなく、ブロック率の低下にもつながった事例です。
さらに、獲得したユーザーに対してキャンペーン情報や商品情報を継続的に配信することで、購買プロセスにおける接触機会を増やし、商品認知から購入への導線強化に寄与しています。
まとめ
チャットコマースは、チャットボットやメッセージアプリなどの会話型ツールを活用し、顧客とのコミュニケーションを通じて商品販売やサポートを行うEC手法です。
リアルタイムでの質問対応や商品提案が可能なため、顧客の不安を解消しながらスムーズな購買体験を提供できる点が特徴です。近年はAI技術の進化やLINEなどのメッセージアプリの普及により、多くの企業がチャットコマースを活用し始めています。目的やKPIを明確にし、適切なツールや会話設計を行いながら運用・改善を続けることで、顧客満足度の向上や売上拡大が期待できます。
チャットコマースに関するよくある質問
チャットコマースと通常のECサイトの違いは?
通常のECサイトはユーザーが自分で商品を探して購入します。一方、チャットコマースはチャットで相談しながら商品を選べるため、購入前の疑問や不安を解消しやすい点が特徴です。
チャットコマースはどのようなツールで利用できる?
LINE公式アカウント、InstagramのDM、Webサイトのチャットツールなどで利用できます。ECサイトではチャット型の接客ツールを導入しているケースもあります。
チャットコマースはどのような企業に向いていますか?
問い合わせが多い企業や、商品説明が重要な業種に向いています。使用感やサイズ感、アレルギーや成分によって最適な商品が異なる化粧品、アパレル、食品などのEC販売に効果的です。
チャットコマースを導入するメリットは何ですか?
顧客の疑問にリアルタイムで対応できるため、購入率の向上が期待できます。また、顧客との継続的なコミュニケーションが取りやすく、リピート購入にもつながります。
文:Takumi Kitajima





