スマートフォンの普及により、誰もが日常的にSNSで情報を発信・共有する時代になりました。商品や企業に関する評価や意見は、消費者だけでなく、社員や取引先、株主などさまざまな立場の人から発信されます。
こうした声を的確に捉えるソーシャルリスニングは、リスク管理だけでなく、ビジネス改善のヒントとしても重要です。一方で、多様で広大なSNSプラットフォームを人の目で監視し続けるのは現実的に難しいため、その業務をサポートしてくれるツールの活用が欠かせません。
本記事では、ソーシャルリスニングツールの概要、機能、おすすめツール、選び方を紹介します。

ソーシャルリスニングツールとは
ソーシャルリスニングツールとは、SNSやブログ、掲示板、口コミサイトなどに投稿された情報を収集・分析し、消費者の声や市場動向を把握するためのツールです。ソーシャルプラットフォーム上の投稿を監視・分析するプロセスを自動化し、膨大なデータから自社の商品やサービスに関連する情報を効率的に抽出できます。
ソーシャルリスニングを実施することで、インターネット上に投稿されたユーザーの自然な声をもとに、消費者の本音や潜在ニーズを把握し、マーケティング施策や商品開発、サービス改善などに役立てることが可能になります。従来のアンケート調査では見つけにくいカスタマーボイスや隠れた不満も把握できる点が特徴です。
また、ソーシャルリスニングは近年、マーケティングだけでなく、広報や商品企画、カスタマーサポートなど幅広い部門で活用されています。一方で、データ収集や分析の理解が必要なため、ツールを使いこなすまでに一定の学習が求められます。
ソーシャルリスニングが注目を集める理由
ソーシャルリスニングが注目されている背景には、スマートフォンやSNSの普及があります。ユーザーが日常的に意見や体験を発信するようになり、企業はインターネット上から大量の消費者の声を取得できるようになりました。
また、口コミの影響力が高まり、特に率直な意見や否定的な評価が購買判断に大きく影響するようになっています。さらに、情報拡散のスピードが速まったことで、炎上リスクへの迅速な対応や、顧客ニーズの変化をいち早く把握する重要性も高まっています。
ソーシャルリスニングとソーシャルモニタリングの違い
ソーシャルリスニングとソーシャルモニタリングは似た概念ですが、目的と活用範囲に違いがあります。ソーシャルリスニングは、ブランドに関する言及を広く分析し、顧客ニーズの把握や市場分析、ターゲット理解につなげるための手法です。
一方、ソーシャルモニタリングは、特定のキーワードやブランドに関する投稿を追跡し、問い合わせ対応や評判管理など、主にカスタマーサポートの文脈で活用されます。つまり、モニタリングが「把握と対応」を目的とするのに対し、リスニングは「分析と活用」に重きを置く点が大きな違いです。

ソーシャルリスニングツールにできること・基本機能
ソーシャルリスニングツールは、SNS上の膨大なデータを収集・分析することで、マーケティングや商品開発に活用できる消費者の声や市場の動きを可視化するためのツールです。ここでは、主な活用方法(できること)と、それを支える基本機能を整理します。
消費者の本音や感情を把握する
ソーシャルリスニングツールを活用することで、SNSや口コミサイトに投稿されたユーザーのリアルな声を収集し、世の中の感情や評価の傾向を把握できます。従来のアンケートでは捉えにくい率直な意見や潜在ニーズを発見できる点が特徴です。これを支えるのが、キーワードを指定して投稿を収集するデータ収集機能や、投稿内容を肯定・否定に分類するポジネガ分析(センチメント分析)です。
市場や競合の動向を分析する
自社だけでなく業界全体に関する投稿を分析することで、競合分析や市場のトレンド把握につなげることができます。自社との比較を通じてポジションを客観的に評価し、新たなビジネスチャンスや差別化のヒントを見つけることにもつながります。主に、投稿数や評価の変化を追う時系列分析、データを数値やグラフで可視化する機能などが活用されます。
炎上リスクや課題を早期に察知する
SNS上での言及数の急増やネガティブな投稿の増加を検知することで、炎上や風評被害の兆候を早期に把握できます。問題が大きくなる前に対応できれば、ブランドリスクの管理や顧客対応の迅速化にも役立ちます。このような用途では、投稿数の変化を継続的に監視する機能や、異常値を検知して通知するアラート機能を利用します。
インフルエンサーや影響力のある投稿を特定する
「いいね」数などのSNSのエンゲージメントや拡散状況、発信者の影響力を分析することで、話題の中心となっている投稿やインフルエンサーを特定できます。自社に適したインフルエンサーの発見や、効果的なプロモーション施策の立案に活用できます。これには、投稿ごとのパフォーマンス分析や、アカウント単位で影響力を評価する機能が含まれます。
施策の効果測定や改善に活用する
キャンペーンや広告施策に対するSNS上の反応を分析することで、施策の効果を評価できます。ユーザーの反応や感情の変化を継続的に把握することにより、顧客満足度の改善や施策の最適化につなげられます。これらの目的には、収集したデータを数値やグラフで可視化する機能や、属性情報(年齢・性別など)の分析機能が活用されます。また、海外言語に対応したツールであれば、グローバル市場での反応も把握できます。
おすすめのソーシャルリスニングツール
- Brandwatch
- Talkwalker
- Meltwater
- Sprinklr Insights
- Quid Monitor
- 見える化エンジン
- Social Insight
- Zanroo
- SocialDog
1. Brandwatch
Brandwatch(ブランドウォッチ)は、日本の大手企業にも採用されているソーシャルリスニングツールです。SNS、ニュース、ブログ、レビューなど、1億サイト以上から収集したデータをもとに、高度な分析を行うことができます。また、インサイトの分析を自動化するAI機能も備えています。
2. Talkwalker
Talkwalker(トークウォーカー)は、グローバル企業にも採用されているソーシャルリスニングツールで、SNSだけでなくニュースやブログなど幅広いソースをモニターできます。AIを活用した高度な分析が可能で、ピーク検出、予測、AIサマリーにより、ターゲットオーディエンスやブランドをより深く理解するためのインサイトを提供します。
3. Meltwater
Meltwater(メルトウォーター)は、SNSに加えてニュースやメディア情報も横断的に分析でき、ブランドの評判管理や競合分析、広報活動の効果測定まで一元的に行えるツールです。定例レポートの自動作成機能や、アナリストによるサポートも提供しています。また、日本企業での導入実績も多い点も特徴です。
4. Sprinklr Insights
Sprinklr Insights(スプリンクラーインサイト)は、ソーシャルリスニングに加えて、顧客対応やマーケティング管理なども統合できるプラットフォームです。複数チャネルのデータを一元管理でき、大規模な運用やグローバル企業のマーケティング基盤として活用されています。
5. Quid Monitor
Quid Monitor(クイッドモニター)は、AI技術を駆使し、SNS・ブログ・消費者レビュー・ニュース・掲示板に投稿されている膨大なデータを分析できるソーシャルリスニングツールです。キーワード入力で51ヶ月前までのSNS・クチコミのデータを分析でき、日本でも多くの大手企業の導入実績があります。
6. 見える化エンジン
見える化エンジンは、SNSや口コミサイトの投稿を分析し、顧客の声を可視化できる国産ツールです。日本語データの分析に強く、営業報告やコールセンターなどの社内リソースも分析対象として取り込むことができます。また、コンサルタントが分析目的にあわせて導入や活用を支援するサポートサービスも用意されています。
7. Social Insight
Social Insight(ソーシャルインサイト)は、SNSアカウントの分析とソーシャルリスニングを組み合わせて活用できるツールです。投稿分析や競合比較など、日常的な運用改善に役立つ機能が充実しており、実務で使いやすい点が特徴です。
8. Zanroo
Zanroo(ザンルー) は、アジア発のソーシャルリスニングツールで、日本語を含む多言語分析に対応しています。SNS上のトレンド把握やブランド評価の分析に強く、グローバル展開を視野に入れた企業にも適しています。
9. SocialDog
SocialDog(ソーシャルドッグ)は、SNSマーケティング向けのさまざまな機能を備えたオールインワンツールです。SNSアカウントの運用支援を中心に、キーワードモニタリングなどの簡易的なリスニング機能も利用できます。比較的低コストで導入できるため、小規模な運用や初めての導入に適しています。
ソーシャルリスニングツールの選び方
目的に合った活用ができるか
まず、自社がソーシャルリスニングで何を実現したいのかを明確にします。顧客の声の把握、競合分析、炎上リスクの監視など、目的によって必要な分析内容は異なります。目的に合った分析ができないツールを選ぶと、データを収集しても実務に活かせないため注意が必要です。ツール選定では、得られた情報により「具体的なアクションを起こせるか」を起点に考えることが重要です。
必要なデータと分析範囲に対応しているか
分析対象とするSNSやメディアに対応しているかも重要なポイントです。ツールによっては特定のSNSに特化しているものもあれば、複数メディアを横断的に分析できるものもあります。また、取得できるデータ量やさかのぼれる期間など分析の範囲も異なるため、自社の対象領域に十分対応しているかを確認しましょう。
予算に見合った機能か(コストパフォーマンス)
ソーシャルリスニングツールは、無料プランのあるものから高額なエンタープライズ向けまで幅広く存在します。機能が多いほど費用も高くなる傾向があるため、必要以上の機能を求めるのではなく、目的に対して過不足のない機能を選ぶことが重要です。
データの質と使いやすさ
分析結果の見やすさも選定の重要なポイントです。収集できるデータ量が多くても、処理速度が遅かったり、分析結果が分かりにくい場合は実務で活用しづらくなります。ダッシュボードの見やすさやレポート共有のしやすさなど、日常業務で使いやすいかどうかも確認しましょう。
運用体制に合っているか
ソーシャルリスニングツールは、導入後の運用が重要です。高機能なツールでも、使いこなせなければ十分な効果は得られません。自社の体制やスキルに合ったツールを選び、必要に応じてトライアルやサポート体制も確認すると安心です。
まとめ
ソーシャルリスニングツールは、SNSや口コミなどの投稿データを収集・分析し、消費者の本音や市場の動向を把握するためのツールです。マーケティングや商品開発、リスク管理など幅広い業務に活用でき、従来のアンケート調査などでは得られにくいインサイトを得られる点が特徴です。
ツールには、高度な分析に対応したものから導入しやすいものまでさまざまな種類があるため、自社の目的や運用体制、予算に合ったものを選ぶことが重要です。必要な機能を見極め、継続的に活用できる環境を整えることで、データを実務に活かしやすくなります。
ソーシャルリスニングツールに関するFAQ
ソーシャルリスニングツールの価格帯はどのくらい?
ソーシャルリスニングツールの価格は、機能やデータ量、利用規模によって大きく異なります。無料または低価格で使える簡易ツールもありますが、本格的な分析が可能なツールは月額数万円〜数十万円以上となるケースが一般的です。多くの高機能ツールは価格を公開しておらず、個別見積もりとなる点にも注意が必要です。
ソーシャルリスニングツールにはプライバシーに関する懸念がありますか?
一般的なソーシャルリスニングツールは、SNSやウェブ上で公開されている情報(公開投稿)を対象に分析を行います。そのため、個別にユーザーの同意を取得する仕組みは通常ありません。一方で、各SNSの利用規約やデータ利用ポリシーに従う必要があり、取得データの取り扱いや社内での利用範囲については十分な配慮が求められます。
ソーシャルリスニングツールはどのような用途に活用できますか?
ソーシャルリスニングツールは、特定のブランドや商品に関する投稿の把握だけでなく、関連キーワードや業界全体の動向、競合に関する評価の分析にも活用できます。消費者の関心やトレンドを広く把握し、マーケティングや商品改善のヒントを得るための手段として利用されます。
文:Norio Aoki





