割引や値引きは、消費者にとって非常に魅力的なものです。アパレルショップのセールやスーパーのタイムセールが多くの人を引きつけることからも、価格面のお得感が購買意欲に与える影響は大きいといえます。
一方で、割引は使い方を誤ると、利益率やブランドイメージに悪影響を与えることもあります。売上を伸ばすつもりで始めた割引が、かえって損失をもたらすケースもあるため、実施方法には注意が必要です。eコマースでは、仕組みを工夫することで、さまざまな割引戦略を展開できます。適切に活用すれば、平均注文額(AOV)の向上や、オンラインショップの継続的な成長にもつながります。
本記事では、さまざまな割引戦略と事例、割引戦略のポイントについて紹介します。

割引戦略とは
割引戦略とは、商品やサービスの価格を一時的または条件付きで下げることで、購入を促す販売戦略です。セール価格の設定、クーポン配布、割引コードの発行、送料無料、まとめ買い割引、会員限定割引など、さまざまな方法があります。また割引によって生まれる効果としては、新規顧客の獲得、在庫の消化、客単価の向上、リピート購入の促進などがあげられます。ただし安易に行うと、利益率の低下やブランド価値の毀損、安売りの常態化といったリスクもあります。そのため、割引戦略を慎重に立案したうえで実施することが大切です。
なお、割引と似た言葉の「値引き」は、在庫処分や品質不備などにより、やむを得ず価格を下げる場面で使われます。一方、「割引」は、キャンペーンやクーポンなど、あらかじめ設計された販売施策として使われることが多い表現です。
割引戦略10選
- 1つ買うともう1つ無料にする
- 無料ギフトを付ける
- 初回購入割引を提供する
- 購入金額に応じて割引する
- まとめ買い割引を設定する
- 送料無料・送料割引を提供する
- 顧客ごとに割引をパーソナライズする
- タイムセールを実施する
- 先行予約限定の割引を実施する
- 在庫処分や季節セールを実施する
1. 1つ買うともう1つ無料にする
「1つ買うともう1つ無料(BOGO:Buy One Get One)」は、対象商品を購入した顧客に、同じ商品や関連商品を追加で提供する割引戦略です。
「2点目半額」や「Xを購入するとYをプレゼント(Buy X Get Y)」も、この施策に含まれます。単価よりも購入点数を増やしたい場合に向いており、食品や日用品など、消耗品との相性が良い施策です。関連商品を組み合わせれば、クロスセルやアップセルにもつなげられます。一方で、利益率への影響が大きくなりやすいため、対象商品の選定や原価管理が重要です。
コンビニエンスストアのローソンでは、「1個買うと、1個もらえる」キャンペーンを期間ごとに対象商品を変えながら、繰り返し実施しています。
2. 無料ギフトを付ける
無料ギフトは、商品購入者にノベルティやサンプル商品を提供する施策です。
価格そのものを大きく下げずに、お得感や特別感を演出できる点が特徴です。化粧品、雑貨、食品など、幅広い価格帯の商品を扱う事業者と相性が良く、新商品の認知拡大や関連商品の体験促進にも活用できます。また、「〇円以上購入でプレゼント」といった条件を設定すれば、客単価向上も期待できます。
ハチミツを製造、販売する杉養蜂園では、商品を1万円以上購入した顧客向けのプレゼント企画を実施しています。
3. 初回購入割引を提供する
初回購入割引は、新規顧客向けにクーポンや値引きを提供し、最初の購入ハードルを下げる施策です。
新商品のお試し価格や初回送料無料も、この戦略の一種といえます。ECサイトでは非常に一般的な施策であり、特に競合が多いジャンルや、リピート購入が期待できる商材と相性が良い方法です。初回購入をきっかけに会員登録やメルマガ登録へつなげるなど、継続的な販促にも活用できます。
家電や生活用品を取り扱うアイリスオーヤマの公式通販サイトアイリスプラザでは、初回購入者限定のセールを実施しています。
4. 購入金額に応じて割引する
購入金額に応じた割引は、「5,000円以上で500円オフ」「10,000円以上で15%オフ」のように、一定金額以上の購入を条件として割引を提供する施策です。
客単価を上げやすい点が特徴で、まとめ買いや追加購入を促したい場合に向いています。また、送料無料ラインと組み合わせる方法も、顧客が「あと少しで特典対象になる」と感じやすくなり、購入金額の引き上げに非常に有効です。
ジュエリーを取り扱うSMUKでは、購入金額に応じて割引率を引き上げる期間限定キャンペーンを実施しています。
5. まとめ買い割引を設定する
まとめ買い割引は、複数の商品を同時購入した場合に割引を提供する施策です。「3点以上購入で10%オフ」や「5個セット割引」などが一例です。一般的には、商品は同一商品でも別商品でもよく、購入点数が条件となります。
日用品やオフィス用品、食品など、継続的に消費される商品の販売と相性が良く、平均注文額(AOV)の向上が期待できます。購入した商品を消費しきる期間に設定できる定期購入サービスと組み合わせるのも効果的で、顧客満足度やLTV(顧客生涯価値)の改善にもつながります。
オフィス用品を取り扱うASKULでは、複数のカテゴリーをまたいで購入することを条件とした独自の「まとめ割」を提供しています。
6. 送料無料・送料割引を提供する
送料無料や送料割引は、購入時の負担感を減らし、購入を後押しする施策です。「〇円以上で送料無料」や「期間限定で送料割引」などの形で実施されます。
ECサイトでは非常に一般的な戦略であり、特に送料が購入の障壁になりやすい低単価商品や日用品と相性が良い施策です。送料無料ラインを設定すれば、まとめ買いやクロスセルによる客単価向上を期待できます。
通販サイトのTBSショッピングでは、2点以上、合計金額1万5千円以上の購入を条件とした送料無料キャンペーンを実施しています。
7. 顧客ごとに割引をパーソナライズする
顧客ごとの購入履歴や会員情報、誕生日などをもとに、クーポンや特典をパーソナライズして提供する施策です。
一律に値引きするのではなく、特定の顧客層へ限定して訴求できるため、利益率への影響を抑えながら販促を行いやすい点が特徴です。誕生日クーポン、休眠顧客向けクーポン、メルマガ登録者限定特典などが代表例です。また、購入実績に応じた会員ランクによって割引額がグレードアップしていく手法も一般的です。
化粧品を取り扱うマナラでは、誕生月を登録するだけで簡単に利用できる誕生日特典を提供しています。
8. タイムセールを実施する
タイムセールは、一定期間や特定の時間帯だけ価格を下げる施策です。曜日限定のセール、毎月一定日開催のセールなど、さまざまな形があります。
「今だけ」という限定感で購入を促したり、話題作りでPRしたりする場合に効果的です。特に食品や季節商品など、購入タイミングが重要な商材と相性が合います。一方で、頻繁に実施しすぎると通常価格で購入されにくくなる可能性もあるため、実施頻度には注意が必要です。
食品宅配サービスのOisix(オイシックス)が運営するOisix産直おとりよせ市場では、干物という食品の特性に合わせて4日間のタイムセールを実施しています。
9. 先行予約限定の割引を実施する
先行予約限定の割引は、「○月○日までの予約で20%引き」「先着○名まで会員限定の特別価格で先行予約受付」といった形で、新製品の販促キャンペーンなどによく使われる戦略です。
EC事業者にとっては、新製品で過剰な在庫を抱えるリスクを軽減したり、予約が入る勢いから本格展開に向けてニーズの高さを予測したりできるメリットがあります。また、会員だけが先行予約できるキャンペーンなどは、常連顧客にメリットを与えるロイヤルティプログラムとしても機能します。
お茶の通販サイトLUPICIA(ルピシア)では、先着順・数量限定で、販売価格の2倍相当のお茶が入っている福袋を販売しています。
10. 在庫処分や季節セールを実施する
在庫処分・季節セールは、売れ残り商品や季節商品の在庫を効率的に消化するための施策です。クリアランスセール、決算セール、季節限定セールなどが代表例です。
在庫を早期に現金化できる点が大きなメリットであり、保管コストや在庫リスクの軽減にもつながります。特にアパレルや化粧品、食品など、季節性や販売期限の影響を受けやすい商品で活用されることが多い施策です。また、常にお買い得品を探している消費者を引きつけるために、アウトレット品や訳あり品のカテゴリーを設ける戦略もあります。
医薬品や日用品を取り扱うマツキヨココカラオンラインストアでは、常設で「アウトレットセール」ページを提供しています。
Shopifyの割引機能
Shopifyには、ECサイト向けの便利な割引設定機能が標準搭載されています。「割引額ディスカウント」では、注文額に対する割合や定額の割引を設定することができます。また、特定の商品やカテゴリーだけに適用することも可能です。
「Xを購入してYをゲット」ディスカウントでは、「対象商品を購入すると別の商品を無料または割引価格で提供する」といった設定ができます。割引コードとしての配布や、条件を満たした際の自動適用が可能となっています。
「無料配送ディスカウント」は、「〇円以上の購入で送料無料」といった施策を実施できます。送料無料の対象条件を設定できるのに加えて、越境ECなどで配送料が高額になりすぎた場合は無料対象から除外することもできます。
これらの割引機能は、オンラインストアだけでなく、Shopify POSを利用する実店舗にも展開できます。ECサイトと実店舗で共通のキャンペーンを実施しやすい点も特徴です。なお、段階的ディスカウントや複数条件を組み合わせたキャンペーン、会員条件に応じた高度な割引設定などを行いたい場合は、Shopify App Storeの関連アプリを活用する方法もあります。

割引戦略のポイント
- 割引の目的を明確にする
- 利益率を確認して割引率を決める
- 対象商品や対象カテゴリーを絞る
- 割引期間とタイミングを決める
- 割引コードと自動割引を使い分ける
- 割引の見せ方を工夫する
- 効果を測定して次回の施策に活かす
1. 割引の目的を明確にする
割引戦略を実施する際は、まず目的を明確にすることが重要です。新規顧客の獲得、在庫消化、閑散期対策、リピート購入の促進など、目的によって適した施策は異なります。
たとえば、新規顧客の獲得には初回購入割引、在庫消化には期間限定セール、リピート促進には会員向けクーポンが向いています。目的を定めずに値下げを繰り返すと、単なる価格競争に陥りやすく、利益率やブランド価値の低下につながる可能性があります。
2. 利益率を確認して割引率を決める
割引を設定する際は、売上だけでなく利益率も考慮する必要があります。販売数が増えても、過剰な値下げで利益が減ったり赤字になる可能性もあります。
そのため、粗利益や限界利益、損益分岐点などを確認したうえで、適切な価格設定を行うことが重要です。また、割引率に応じて客単価や購入点数がどの程度変化するかも予測すると、施策の実施可否を判断しやすくなります。
また、高頻度で大幅な割引を行うと、「通常価格では売れにくい」という状態になる場合もあるため注意が必要です。
3. 対象商品や対象カテゴリーを絞る
割引は、サイト全体ではなく、特定の商品やカテゴリーに限定して実施する方法もあります。たとえば、季節商品や在庫過多の商品だけを対象にしたり、新商品の認知拡大を目的として一部商品に限定したりすることで、利益率への影響を抑えながら施策を実施できます。
また、人気商品まで一律に割引すると利益を圧迫しやすいため、在庫状況や販売状況を確認しながら対象商品を選定することが大切です。
4. 割引期間とタイミングを決める
割引施策は、実施するタイミングや期間によって効果が大きく変わります。曜日限定セール、時間限定セール、季節セール、閑散期キャンペーンなど、目的に応じて実施タイミングを設計することが重要です。
特に、期間限定セールは「今だけ」という限定感を演出することで購入を後押しする施策のため、長期間セールを続けるとその魅力が薄れる可能性があります。
また、需要や在庫状況に応じて価格を変動させる「ダイナミックプライシング」を取り入れる事業者もあります。ただし、頻繁な価格変動は顧客に不公平感を与える場合もあるため、実施方法には注意が必要です。
5. 割引コードと自動割引を使い分ける
割引コードと自動割引には、それぞれ異なるメリットがあります。
割引コードはメルマガやSNS、LINE(ライン)、広告キャンペーンなどで特定の顧客に配布する手法で、キャンペーン別の効果測定にも向いています。問題点としては、利用可能な割引コードを探して入力する操作が、利用者にとって煩雑と感じさせることが挙げられます。
一方、自動割引は、条件を満たすと自動的にカートへ適用されるため、コード入力の手間がありません。購入体験をシンプルにできるため、カゴ落ち防止やコンバージョン率(CVR)改善につながります。ただし、消費者が気付かずに割引を享受し、満足感や特別感を与えられない可能性があります。
6. 割引の見せ方を工夫する
割引戦略を実行する際には、内容だけでなく見せ方も重要です。心理的価格設定を踏まえた割引率、送料無料や期間限定といった情報と割引率の見せ方によって、顧客の印象や購入率が変わることがあります。
たとえば、「通常価格」と「セール価格」を並べて表示すると、お得感を強調しやすくなります。これは、比較対象によって価格の印象が変わるアンカリング効果を活用した方法です。
また、「10%オフ」と表示するか、「1,000円引き」と表示するかによって、顧客の受け取り方が変わることがあります。このように、同じ内容でも表現方法によって印象が変化する考え方をフレーミング効果といいます。単に価格を下げるだけでなく、どのように訴求するかも重要なポイントです。
7. 効果を測定して次回の施策に活かす
割引戦略は、実施して終わりではなく、結果を分析して改善につなげることが重要です。
たとえば、売上だけでなく、客単価、CVR、リピート率、在庫消化率などのデータを収集して変化を確認することで、施策の成果をより正確に把握できます。想定より利益率が低下していないか、新規顧客の獲得につながっているかも確認するとよいでしょう。
自社に合った割引戦略を見つけるには、各指標にKPIを設定して継続的に達成度を分析することも重要です。
まとめ
割引戦略は、新規顧客の獲得、客単価の向上、在庫消化、リピート購入の促進など、さまざまな目的に活用できる販売戦略です。
ECサイトでは、初回購入割引や送料無料、タイムセール、会員限定特典など、多様な割引施策が活用されています。Shopifyでも、割引コードや自動割引を利用することで、こうしたキャンペーンを柔軟に実施できます。
一方で、安易な値下げは利益率の低下や価格競争につながる可能性もあります。そのため、割引の目的や対象商品、実施期間、利益への影響を事前に整理したうえで、自社に合った施策を設計することが重要です。
割引戦略に関するよくある質問
割引戦略とは?
割引戦略とは、商品やサービスの価格を一時的または条件付きで下げ、購入を促す販売戦略です。セール価格、クーポン、送料無料、まとめ買い割引、会員限定割引など、さまざまな方法があります。単なる値下げではなく、新規顧客の獲得、在庫消化、客単価向上などの目的に合わせて設計することが重要です。
割引はマーケティング戦略として得策?
割引は、目的を明確にして実施すれば有効なマーケティング戦略になります。新規顧客の獲得、リピート購入の促進、在庫消化などに役立つ一方、安易に繰り返すと利益率やブランドイメージの低下につながることもあります。
割引戦略の例は?
代表的な割引戦略には、初回購入割引、購入金額に応じた割引、タイムセールなどがあります。たとえば、初回購入割引は新規顧客の購入ハードルを下げる方法です。購入金額に応じた割引は客単価向上に役立ち、タイムセールは期間限定のお得感によって購入を後押しできます。
割引を最も効果的に見せる方法は?
割引を効果的に見せるには、顧客にとってわかりやすく、お得感が伝わる表示にすることが重要です。通常価格とセール価格を並べたり、「10%オフ」と「1,000円引き」を商品価格に応じて使い分けたりすると、割引の魅力が伝わりやすくなります。送料無料や期間限定などの表現も、購入を促進する効果が期待できます。




