企業の主要業務を支える基幹システムは、販売管理や在庫管理、生産管理など多岐に渡ります。日常の業務だけでなく、業務効率化や経営戦略立案の際にも重要となるデータや機能が含まれているため、適切な管理が必要です。一方で、企業規模が大きくなり、さまざまな基幹システムを活用している場合、各システムを個別に管理することで業務が複雑化するといった懸念もあります。そこで、基幹システム連携を行うことで、システムごとの入力や情報検索といった手間が省け、正確かつ迅速な対応が可能となります。
この記事では、基幹システム連携の概要やその種類、メリット、連携の際のポイントについて詳しく解説していきます。データの整合性や互換性の課題に対応することで、業務の円滑化を目指せます。

基幹システム連携とは
基幹システム連携とは、独立している基幹システム同士を連携させ、相互間で情報をスムーズにやりとりできるようにする手法のことです。システム間の連携を行うことで、これまで発生していたシステムごとのデータ入力や情報検索、異なるフォーマットでのデータ管理といった業務の手間を省けるようになります。
企業の主要業務で利用される基幹システムには、主に以下のものがあります。
- 会計システム
- POSシステム
- 生産管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 店舗管理システム
- コンテンツ管理システム
- ビジネスインテリジェンス(BI)
- 顧客関係管理(CRM)システム
- メールマーケティングプラットフォーム
- 企業資材計画(ERP)システム
- 決済処理システム
- カスタマーサービスシステム
自社で利用している基幹システムの中には、社内で独自開発されたものだけでなく、サードパーティから購入したものや、サブスクリプション形式で利用しているものなどもあるでしょう。相互連携を想定して開発されたものであるとは限らず、内部データの形式が異なるといったことも珍しくありません。そこで、基幹システム連携を行うことで個別管理の手間を省き、業務効率化を目指せます。

基幹システム連携の種類
データベース連携
データベース連携とは、基幹システムのデータベースにアクセスし、データ同士を紐づけることで連携する方法です。それぞれのシステムが共通のデータをやり取りするため、大量の情報を管理する場合でも、各システムから情報を入力、確認できます。大量のデータを効率的に扱えるメリットがある反面、扱うデータ容量が大きくなりやすいという特徴もあります。データベース連携はネットワーク通信を前提としているため、通信の暗号化をはじめとするセキュリティ対策が必須となります。
ファイル連携
ファイル連携とは、基幹システムで必要となる情報をCSVやExcel といったファイル形式でエクスポートし、別の基幹システムへインポートすることで行う連携方法です。既存のシステムへの導入が容易であるだけでなく、エクスポートとインポートを別々に行うことから、一方のシステムに障害が発生した場合でも、もう一方のシステムは影響を受けません。リアルタイムでの連携を必要としないデータの更新に適しています。
API連携
近年主流となってきているAPI連携は、基幹システム同士をインターフェース経由で接続することで、リアルタイムでの情報共有を可能にする方法です。異なる開発言語で構築されたシステム間でもスムーズに連携できますが、対象の基幹システムがAPI連携に対応しているかを事前に確認する必要があります。
P2P(ポイントツーポイント)
P2Pは、システム同士を1対1で直接接続する基幹システム連携の方法です。利用している基幹システム数が少ない場合は導入しやすいですが、接続を必要とするシステム数が増えるにつれて構成が複雑化する傾向にあります。
ESB(エンタープライズ・サービス・バス)
ESBは、エンタープライズ・サービス・バスと呼ばれる中央ハブを利用して、システム間の通信を行う方法です。中央集約型の構成をとっており、複数の基幹システムの統合管理ができます。一方で、適切な設計やメンテナンスを怠ると、ESBのトラブルで全体が停止してしまうという「単一障害点」となるリスクもあります。
ハブ&スポーク
中心となるハブに各基幹システムを接続して行う連携方法をハブ&スポークと呼びます。システム同士を個別に直接接続する必要がなく、ハブを介して情報の共有が可能となります。基幹システムを複数抱える場合でも利用しやすいメリットがあります。
メッセージング
メッセージングは、メッセージと呼ばれる情報やデータを交換することでシステム間を連携する仕組みです。送信側と受信側の基幹システムが互いに依存しない ため、一方のシステムで障害やトラブルが発生した場合でも、もう一方のシステムへの直接的な影響を避けられます。
Pub/Sub
Pub/Subは、送信者と受信者が直接通信をすることなく、仲介役を介してメッセージのやり取りを行う連携方法です。システム同士の依存度の低さを表す疎結合性を保つことができるため、それぞれ独立して開発されたシステムを利用している場合にも適しています。
iPaaS(アイパース)
iPaaSは、クラウドベースで基幹システムを連携させる方法です。使用している基幹システムがクラウドサービスかオンプレミスサーバーかといった環境の違いを問わずに連携でき、既存システムを活かしてシームレスな連携を実現したい場合に最適です。

基幹システム連携のメリット
業務効率化が図れる
基幹システム連携を行うことにより、業務効率化が図れます。複数の基幹システムを管理している場合、それぞれのシステムにアクセスして情報を閲覧したり、入力したりする作業が発生します。手作業による入力はヒューマンエラーが起こる可能性もあり、修正に時間が取られることも少なくありません。基幹システム連携を行うことにより、これらの管理に必要となる時間や手間を削減できます。二重入力やヒューマンエラーの減少によって業務効率化を実現し、人員や時間といった経営資源を有効活用できるようになります。
業務改善や経営戦略に活用できる
基幹システム連携により、経営や業務に関連するすべての情報をリアルタイムで可視化することができ、業務改善や経営戦略立案に活用できます。事業の規模が大きくなると、扱う情報が膨大になる傾向にあり、各基幹システム内の情報が孤立してしまうことで、全体的な見通しが立てにくくなる可能性があります。連携することで大量の情報を素早く確認し、分析することができ、改善すべき点を洗い出すことで、経営戦略を立案する際の重要な参考資料として役立てられます。
管理コストの削減が見込める
基幹システム連携により、データ管理やシステム管理に際するコストの削減が見込めます。各システムを個別で管理する場合、データの移動や統合、管理に手間と時間がかかりますが、連携を行うことで入力作業や確認作業が削減され、人的コストの削減につながります。
顧客満足度向上につながる
基幹システム連携ですべてのデータにアクセスできれば、情報を元にパーソナライズドマーケティングなど顧客満足度(CS)向上につながる施策を実行できます。連携することでリアルタイムの情報を得られることから、リアルタイムパーソナライゼーションも実施できるでしょう。

基幹システム連携の課題
データを同期できない場合がある
連携方法や連携する基幹システムにより、データを同期できない場合があります。各システムが使用している言語が異なる場合や連携方法に互換性がない場合、一部のシステムとは連携できない、連携できてもすべてのデータを同期することができない、といった問題が発生する可能性があります。さらに、基幹システム連携に伴い、情報を同期する際にエラーが発生するリスクも否定できません。エラーによってマスターデータが消失したり、情報が見つけにくくなったりしないよう、慎重に対応し、事前に十分な対策を立てる必要があります。
データ反映が遅くなる可能性がある
繁忙期や回線が混雑するタイミングでは、データ反映が遅くなる可能性があります。特にマーケティングや在庫管理などで多くの情報をリアルタイムで確認する場合、データ遅延が大きな損失を生むリスクもあるでしょう。そのため、基幹システム連携を行う際には、耐障害性が高いかどうかを確認することをおすすめします。
セキュリティ対策が必要となる
基幹システム連携によりさまざまなデータにアクセスができるようになるため、情報漏洩や不正アクセスから顧客データを守るためにも、より強固なセキュリティ対策が必要です。特にECサイト運営など、個人情報や取引情報、決済情報を扱う事業主は、システム全体をサイバー攻撃から守るためにも、連携方法の選定やセキュリティ対策において、より慎重になる必要があるでしょう。
基幹システム連携とクラウドネイティブアーキテクチャ
基幹システム連携において近年注目を集めているのが、「クラウドネイティブアーキテクチャ」です。これは「マイクロサービス」と呼ばれる独立した機能単位で開発を行い、「コンテナ」に格納して管理、連携させるクラウド環境に最適化されたシステム構造のことです。変化の激しい市場動向に柔軟に対応できるよう、必要なシステムの追加や削除ができるだけでなく、それぞれのシステム規模を柔軟に調節することが可能となります。障害が起こったシステムとの連携を外すことで被害を最小限に抑えることも可能です。
基幹システム連携において、クラウドネイティブアーキテクチャを活用するメリットは以下の通りです。
- システムの開発スピードが向上する
- 規模の変化に対応できる
- アップデートやメンテナンスがしやすい
- 障害やトラブルが他のシステムに影響しにくい
- コスト削減につながる

基幹システム連携を行う際のポイント
拡張性
基幹システムのデータが増加したり、別の基幹システムを導入したりした場合でも、継続して安定運用できるかどうかが重要です。事業の規模や使用するシステムは事業の成長と共に変化することが多いため、データが急増した場合でも柔軟に対応できるかを確認すると良いでしょう。
使いやすさ
基幹システムを連携した際に重要となる要素の一つに、使いやすさがあります。業務改善や効率化のために連携を行ったにもかかわらず、操作性が悪く、使いこなせるまでに時間がかかってしまうようでは、連携のメリットがなくなってしまいます。ユーザーフレンドリーなUIを採用しているか、特別な研修を行わなくても使用できるか、といった点に着目することが重要です。
セキュリティ対策
基幹システム連携を行う上で必要となるのが、セキュリティ対策です。個人情報や購入履歴、決済に使用したカード情報などが流出してしまったり、サイバー攻撃により情報漏洩が発生したりしないよう、十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。
カスタマイズ性
連携に際し、自社の事業内容や規模、社内構造に合わせてカスタマイズができるかを確認します。すべての基幹システムとの連携が必要となる場合だけでなく、一部のシステム連携だけで十分なケースもあります。自社のワークフローや慣習に合わせて連携すれば、効率化や業務改善も円滑に進むでしょう。
リアルタイム性
リアルタイムでの情報処理がスムーズかどうかを確認します。マーケティングにデータを活用する場合や、複数の販売チャネルを管理している場合は、特に重要となります。在庫情報がリアルタイムで更新されないことにより、欠品による機会損失につながるケースも少なくありません。市場の変化に素早く対応し、適切な戦略を立てるためにも重要といえます。
費用対効果
初期費用だけでなく、ランニングコストといった長期的な費用も考慮し、導入によって得られる恩恵との費用対効果のバランスを確認します。連携する基幹システムだけでなく、連携が必要となるデータの範囲や量、頻度についても事前に精査しておくことで、より高い費用対効果が期待できます。
サポート体制
基幹システム連携の運用開始後も長期的にサポートが受けられる体制であるかを確認します。思わぬトラブルが発生した際、迅速に対応できる体制がなければ、大きな損失につながる可能性があります。さらに、連携システムのアップデートによりUIが変わってしまう、連携に不具合が生じる、といったことも珍しくありません。業務改善のための連携が原因で、現場がさらなる対応に追われることがないよう、トラブル発生時のサポート体制の確認は必須事項と言えます。
まとめ
基幹システム連携は、企業の主要業務で利用される会計システムや販売管理システム、在庫管理システムなどを連携し、相互間で情報をスムーズにやり取りできるようにする仕組みです。基幹システム連携にはデータベース連携やファイル連携、API連駅などさまざまな種類があり、それぞれのメリットやデメリットを理解し、自社に合ったものを選ぶ必要があります。
基幹システム連携を行うと、業務効率化や管理コスト削減、顧客満足度向上といったメリットが得られます。データを一元管理できることにより、業務改善点の洗い出しや経営戦略にも活用できます。一方で、データを同期できない場合があることや、データ反映の遅延リスク、セキュリティ対策の必要性といった課題もあります。
基幹システム連携を行う際には、拡張性やカスタマイズ性、リアルタイム性に優れているかという点だけでなく、使いやすさやセキュリティ対策、サポート体制、費用対効果といった点についても総合的に確認する必要があります。
基幹システム連携の導入は、業務改善や効率化だけでなく、顧客満足度の向上や経営戦略立案にも大きく寄与します。
基幹システム連携に関するよくある質問
基幹システム連携とは?
基幹システム連携とは、独立している基幹システム同士を連携させ、相互間で情報をスムーズにやりとりできるようにする手法のことです。
基幹システム連携のメリットは?
- 業務効率化が図れる
- 業務改善や経営戦略に活用できる
- 管理コストの削減が見込める
- 顧客満足度向上につながる
基幹システム連携を行う際のポイントは?
- 拡張性
- 使いやすさ
- セキュリティ対策
- カスタマイズ性
- リアルタイム性
- 費用対効果
- サポート体制
基幹システム連携とERP統合の違いは?
基幹システム連携は業務ごとに独立しているシステムを連携させて管理しやすくする手法であるのに対し、ERP統合はすべての基幹業務を一つのシステムに統合したものです。
基幹システム連携とエンタープライズ統合の違いは?
基幹システム連携は、企業の特定の主要な基幹業務システム同士を連携させるものであるのに対し、エンタープライズ統合(EI)は、企業全体のデータや多様な業務システムを包括的に統合させるものです。




