2025年の調査によると、新規開業者における女性比率は、調査開始以来の最高水準を4年連続で更新しています。日本国内でも、女性の起業家やビジネスオーナーは着実に増加しているといえるでしょう。
一方で、具体的な割合としてはいまだ25.7%にとどまっているのも実状です。起業家の女性比率の低さは、ロールモデル不足や資金調達の難しさが背景にあるといわれています。その解決に向けて、近年は女性起業家を支援するための補助金制度や支援プログラムも拡充されてきました。
そこで本記事では、スタートアップ戦略や起業家精神を学ぶうえで参考となる成功した女性起業家を10人紹介することに加えて、女性起業家が利用できる助成金・補助金もあわせて紹介します。
女性起業家の成功者10選
1. 篠原欣子さん
パーソルテンプスタッフ株式会社を創業した篠原欣子さんは、日本に人材派遣という働き方を普及させた代表的な女性起業家です。日本で女性の社会進出が進んでいなかった時代に、「女性も働き続けられる社会を実現したい」という想いから起業したといいます。自身は海外で秘書として働くなかで、派遣という仕組みに可能性と市場需要を見出し、1973年に自宅の一室から事業をスタートしました。
創業当初は資金も乏しく、英語教師の副業で生計を立てながら事業を継続するなど、厳しい環境のなかでのスタートでした。その後、テンプスタッフは人材サービス大手へと成長し、現在ではパーソルグループとして売上約1.4兆円規模の企業へと発展しています。自身も、日本で初めて資産10億ドルを超えた女性起業家となるなど、国内トップクラスの成功を収めています。
2. 勝友美さん
勝友美さんは、オーダースーツブランド「Re.muse」を展開する女性起業家です。アパレル販売員としてキャリアをスタートし、入社初日で売上トップを記録するなど、早くから高い営業力を発揮しました。その後、スタイリストや新規事業の立ち上げを経験してから、オーダースーツ業界へと転身しています。
起業当初は資金や人脈が限られるなか、営業から採寸、納品までを一人で担いながら顧客との信頼関係を構築しました。自分にも相手にも正直に接する「直球勝負」がひとの心に響くと考え、商品を売るよりも顧客が理想の姿に近づくためには「こうした方が良いと思う」と伝えるスタイルになったといいます。
デザイン性と着心地にこだわったスーツは1着20万円以上という価格帯でも支持を集め、「ヴィクトリースーツ」として営業職を中心に人気を獲得しています。現在では東京・大阪に店舗を展開し、ミラノコレクションへの出場も果たすなど、ブランドとしての地位を確立しました。
3. 福田恵里さん
福田恵里さんは、女性向けキャリアスクール「SHElikes」を展開するSHE株式会社の代表を務める女性起業家です。女性が自分らしいキャリアを築ける環境づくりを目的に事業を立ち上げました。
海外留学から帰国後、スキルを学ぶ場に若い女性がほとんどいない現状に課題を感じ、大学時代に女性向けWebプログラミングスクールを立ち上げました。26歳で起業後は女性向けコワーキングスペースの運営から始まり、顧客のフィードバックをもとにサービス内容を何度も見直すなかで、最初は付随サービスだったキャリア系スクールがメインとなり、さらに通学型ではなくサブスクのオンライン完結型へと変化していったといいます。単なるスキル提供にとどまらず、「自分のなりたい姿」の実現を支援する設計にこだわっている点が特徴です。
過去には、Shopify(ショッピファイ)と連携したイベントの開催など、EC領域における女性支援にも取り組んでいます。こうした顧客起点の改善と柔軟なピボットにより、累計受講者数が20万人を超える規模へと成長しました。
4. 米良はるかさん
米良はるかさんは、クラウドファンディングサービス「READYFOR」を運営するREADYFOR株式会社の創業者であり、日本で初のクラウドファンディングを広めた代表的な女性起業家です。
NPOなどが利用できる社会課題解決型の資金調達を日本に普及させた実績が評価され、国内外で数々の賞を受賞しています。また、日本人最年少でダボス会議に参加したり、民間議員を務めたりするなど、社会的影響力を広げています。
5. 仲暁子さん
仲暁子さんは、ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリー株式会社の代表を務める女性起業家です。「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というコンセプトのもと、個人と企業がつながれるビジネスSNSを開発しました。現在では、有名企業からスタートアップまで40,000社以上が利用するサービスへと成長しています。
Wantedlyは、求職者が企業に気軽にアプローチできるだけでなく、企業側からもダイレクトスカウトを送ることができるなど、双方向のマッチング機能が特徴です。新卒やインターン採用にも対応しており、求職者と企業双方のニーズを満たすサービスとして広く活用されています。
6. 経沢香保子さん
経沢香保子さんは、ベビーシッターと保護者をつなぐCtoCのマッチングサービス「KIDSLINE」を展開する株式会社キッズラインの創業者です。ほかにも複数の会社を起業しており、自身の育児経験を背景に、「育児は母親だけが担うものではない」という課題意識と、日本にベビーシッター文化を広めたいという想いから事業を立ち上げました。
同サービスは、従来は家庭の中だけのものとされてきた家事や育児を、得意な人々とシェアできる仕組みとなる新たな社会インフラを目指しているといいます。2014年のサービス開始以来、累計予約数は260万件を突破し、日本全国へと広がっています。
7. 近藤麻理恵さん
「こんまりメソッド」で知られる近藤麻理恵さんは、独自の片づけ理論をビジネスとして展開した女性起業家です。学生時代から片づけの研究を重ね、大学在学中に片づけコンサルティング業務を開始しました。独立後は個人でサービス提供を行いながら実績を積み、予約が半年待ちになるほどの人気を獲得しました。その後、顧客の声をもとに書籍を出版し、ベストセラーとなったことで、事業は大きく拡大しました。
「ときめき」を基準に物を選ぶ独自のメソッドは世界中で支持され、書籍は40か国以上で翻訳されるなどグローバルに展開されています。現在では、Netflix(ネットフリックス)番組への出演や片づけコンサルタントの育成などにも取り組み、多角的なビジネスへと発展しています。
8. 笹木郁乃さん
笹木郁乃さんは、PRを活用して企業の成長を支援する事業を展開しており、現在は株式会社LITAの代表を務めています。同社ではこれまで1,600社以上のPR代行や8,000人以上のPR人材育成に関わり、PRを軸にしたビジネスモデルで安定した成長を実現しています。
独立前は、エアウィーヴやバーミキュラを人気商品に成長させてきた立役者でもあります。自信のある商品でも無名ではなかなか売れない一方で、メディア露出や地道な広報活動が実れば劇的に変化するという経験が起業のきっかけとなっています。従来のプレスリリース中心の手法に依存せず、企画提案やメディアアプローチを組み合わせた独自のPR手法を確立し、多くの企業の認知拡大や売上向上に貢献しています。
現在は「PRの力で、全ての人・企業の可能性開花に貢献する」という理念のもと、企業支援と人材育成を両軸に事業を拡大し、PRを通じて社会課題の解決にも取り組んでいます。
9. 川﨑真菜美さん
川﨑真菜美さんは、株式会社ODEKOの代表として、女性の健康と美を支援する事業を展開しています。ピラティストレーナーとして独立後、スタジオ運営の経験をもとに2021年に法人を設立し、女性特有の悩みに寄り添うサービスを拡大してきました。
現在は、ピラティススタジオや腸・子宮ケアサロンの運営に加え、美容・健康食品の企画・開発・販売を行っています。とくに、プロテインなどの自社商品については、開発から販売までを一貫して手がけるD2Cモデルを採用しています。その結果、顧客ニーズに基づいた商品提供と、継続的な関係構築を実現しています。
また、SNS発信やセミナーを通じた教育・コミュニティ形成にも注力しており、女性が自分らしく生きられる社会の実現を目指した事業展開が特徴です。こうした取り組みが評価され、女性起業家大賞の特別賞も受賞しています。
10. ボグノフ愛臨さん
株式会社Bogunov(ボグノフ)の代表を務めるボグノフ愛臨さんは、サブスク解約率を改善するツール「subgrow(サブグロー)」を提供する女性起業家です。自身が利用していたサブスクサービスが使いづらく解約に至ったという体験から、顧客が離脱する理由が企業の改善に活かされていないという課題に着目し、事業を立ち上げました。
ユーザーデータや解約理由を分析し、改善施策につなげる仕組みを低コストで提供することで、中小企業でも導入しやすいサービスを実現しています。顧客が感じる課題を起点にプロダクトを磨き、事業成長につなげています。
女性起業家を支援する助成金・補助金
女性起業家が利用できる助成金や補助金の一覧は以下のとおりです。
- 女性新ビジネスプランコンペティション(DBJ):日本政策投資銀行が主催するビジネスコンテストで、最優秀賞には最大1,000万円の事業奨励金が授与されます。ただし、毎年開催されるとは限らず、審査期間は約半年と比較的長期にわたります。
- 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型):中小企業基盤整備機構と自治体・金融機関が連携し、創業や販路開拓に取り組む事業者を支援する助成金制度です。地域資源を活用した商品開発や販路開拓、研究開発などの取り組みを行う中小企業者や創業者、支援機関、NPO法人などが対象です。なお、農商工連携型の場合は、中小企業者単独ではなく、農林漁業者との連携が必要となります。
- 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者がインボイス導入や賃金引き上げといった制度変更に対応するため、販路開拓や業務効率化などに取り組む際の費用の一部を補助する制度です。補助額は通常枠で50〜100万円、条件を満たす特別枠では最大200万〜250万円程度まで拡大されます。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金:革新的な新製品や新サービス開発、海外需要開拓に取り組む中小企業を対象に、設備投資などの費用の一部を補助する制度です。補助額は従業員数や事業内容に応じて異なりますが、約750万円〜最大3,000万円程度です。
- デジタル化・AI導入補助金:中小企業・小規模事業者の労働生産性向上を目的に、業務効率化やDX推進に向けたITツールの導入費用や関連サービス費用の一部を補助する制度です。補助額は、補助金シミュレーターで申請可能額を確認できます。
まとめ
アパレル、IT、教育、ヘルスケアなど多様な分野で、女性起業家が活躍しています。日本における起業家の女性比率はまだまだ高いとは言えませんが、そうした社会課題に直面した女性だからこそ生みだせたビジネスもたくさんあります。
公的機関や自治体も、女性による起業や会社経営を増やそうという取り組みを拡大させている最中です。助成金や支援プログラムを活用することで、資金面やネットワーク面でのサポートを受けながら事業を加速させることができるでしょう。女性起業家の活躍は今後も広がっていくと考えられますが、決して特別な才能が不可欠というわけではありません。自身の経験や関心がどのようにビジネスにつながるか考えてみるために、今回紹介した方々の例は大きなヒントになるはずです。
女性起業家に関するよくある質問
日本で最も成功した有名な女性起業家は?
日本で最も成功した有名な女性起業家としては、パーソルテンプスタッフ株式会社の創業者である篠原欣子さんが挙げられます。日本で初めて資産10億ドルを超えるなど、大きな実績を持つことで知られています。
女性起業家に多い業種は?
女性起業家に多い業種は、ライターやデザイナー、イラストレーターなど、初期費用を抑えて始めやすい分野です。
女性が1人で始められる仕事は?
女性が1人で始められる仕事としては、パソコン1台で取り組めるライター業のほか、自宅で開業できるネイル・エステなどのサロン、ハンドメイド作品の販売などがあります。
文:Momo Hidaka





