競合他社があらゆる場所に商品を展開しているからこそ、自社より優位に立っているように感じたことはないでしょうか。卸売業者から有名百貨店まで、そうしたブランドは小売流通ネットワークを完璧に構築しています。
そうした企業の戦略をそのまま取り入れれば、自社でも成果を上げられるように思えるかもしれません。しかし、販売チャネルを無理に広げ、より多くの顧客に十分な購買体験を提供できなくなるよりも、自社に合った流通戦略を磨くことが大切です。顧客がどのように商品を購入しているのか、どの販売チャネルで商品を展開するのが効果的かを見極めましょう。あらゆるチャネルへの展開を目指すあまり、収益性を損なわないよう注意が必要です。
このガイドでは、小売流通の仕組みを解説し、主な販売チャネルと流通戦略を紹介します。また、自社に適した選択肢を見極めるためのポイントも説明します。
Table of contents
小売流通とは
小売流通とは、メーカーから仕入れた商品を最終消費者に届けるまでの仕組みや戦略を指します。企業は、卸売や消費者への直接販売など、複数の流通チャネルを組み合わせることができます。
小売流通チャネルの種類
消費者直販(D2C)
消費者直販(D2C:ダイレクト・トゥ・コンシューマー)とは、ブランドが卸売業者や小売業者などの中間業者を介さず、最終消費者に商品を直接販売する形態です。D2Cブランドは、メーカーやサプライヤーから商品を調達し、自社ECサイトなどのオンラインチャネルや直営店を通じて販売します。
D2Cは、ブランドがサプライチェーン全体を管理しやすいことから、広く採用されています。販売方法を自社で管理することで、顧客体験やブランドイメージにも一貫性を持たせやすくなります。
再販業者
再販業者とは、企業から商品を仕入れ、最終消費者や別の企業に販売する仲介業者です。小売流通を拡大する際に利用される、主な3種類の再販業者を見ていきましょう。
小売業者
他の小売店を通じて、自社商品を販売する方法です。たとえば、自社店舗でコーヒー豆を販売している場合、地域のカフェや食品店にも商品を卸すことで、販路やブランドの認知を広げられます。
大切なのは、販売先となる小売店と良好な関係を築くことです。販売先を自社チームの一員と考え、商品の特徴や接客方針を共有しましょう。その店舗を訪れる顧客にも、自社から直接購入する場合と同等の購買体験を提供することが重要です。
卸売業者
卸売業者は、メーカーやブランドから商品をまとめて仕入れ、小売業者などに利益を上乗せして販売します。
たとえばコストコは、商品を大量に仕入れることで調達コストを抑え、その分を販売価格に反映しています。会員は、事業で再販売する商品などを、一般的な小売価格より安く購入できる場合があります。
独立販売代理店
独立販売代理店(インディペンデントディストリビューター)とは、ブランドに代わって商品を卸売業者や小売業者へ販売する事業者です。
ブランドが販売先と直接取引する代わりに、独立販売代理店が営業や受注、流通などの業務を担います。サプライチェーンに新たな仲介者が加わる形と考えると分かりやすいでしょう。
小売流通戦略のタイプ
集中的流通
集中的流通とは、できるだけ多くの販売チャネルを活用し、商品を広く市場に流通させる戦略です。限られた販売先に絞るのではなく、顧客が商品を購入する可能性のあるさまざまな場所で取り扱ってもらうことを目指します。
幅広い消費者に支持される商品には適した戦略です。一方、特定の顧客層を対象とするニッチな商品には、必ずしも向いているとは限りません。
メリット:
- ブランドの認知度を高めやすい
- 顧客が購入しやすい場所に商品を展開することで、市場浸透を図れる
- 消費者から信頼されている販売店や流通業者と提携することで、自社ブランドへの信頼も得やすくなる
デメリット:
- 商品の販売方法やマーケティング方法を管理しにくくなる
- 複数の小売流通チャネルを管理する負担が増える
- ターゲット顧客との接点が少ない販売先への展開は、費用対効果が低くなる可能性がある
選択的流通
選択的流通とは、販売先を限定し、厳選した少数の流通業者や小売業者を通じて商品を販売する戦略です。利用できるあらゆるチャネルに商品を展開するのではなく、ブランドやターゲット顧客に適した販売先を選びます。
この流通モデルは、特定の顧客層をターゲットとしている場合に効果的です。たとえば、スキンケア商品を販売している場合、地域の美容室や理容室、ニキビ治療を扱うクリニックなど、関連性の高いサービス店舗に販売先を絞ることができます。
メリット:
- 複数の店舗を見て回る傾向がある顧客を対象とするブランドに適している
- ブランドの価値観に合い、ターゲット市場との接点を持つ販売先を選ぶことで、ブランドイメージを維持しやすい
- 各地域で適切な販売パートナーと提携することで、新たな市場へ展開しやすくなる
デメリット:
- 潜在顧客が利用するすべての販売場所で商品を取り扱えるわけではない
- 適切な流通チャネルを選ぶには、顧客層や購買行動を深く理解する必要がある
- 自社商品に適した販売先を特定するまでに、試行錯誤が必要になる場合がある
排他的流通
排他的流通とは、販売チャネルを厳しく限定し、選ばれた少数の流通業者や小売業者のみを通じて商品を販売する戦略です。「狭く深く」展開する戦略ともいえます。
主な目的は、商品の希少性や特別感を維持することです。顧客は、限られた販売チャネルでしか商品を購入できません。代表的なのが高級品市場です。たとえばシャネルのような高級ブランドは、限られた高級百貨店や直営店を中心に商品を展開しています。
メリット:
- 販売チャネルが少ないため、管理しやすい
- 顧客を特定の販売店へ誘導することで、流通パートナーと強固な関係を築きやすい
- 販売店がすでに持つ顧客基盤を活用することで、ブランドへの信頼を高めやすい
デメリット:
- 流通パートナーが、契約外の販売業者に商品を転売しないよう管理する必要がある
- 認知度の低いブランドの場合、入手しやすい競合商品ではなく、限られた販売店で自社商品を購入してもらうのが難しい
- 顧客が普段利用している店舗で商品を取り扱っていないと、購入機会を逃す可能性がある
小売流通戦略の選び方
商品の特性を考慮する
どの流通チャネルが自社に適しているかは、販売する商品の特性によって大きく異なります。
たとえば、フレッシュフルーツスムージーのように消費期限が短い商品は、卸売流通にはあまり向いていません。品質が落ちる前に、できるだけ早く最終消費者へ届ける必要があります。保管期間が長くなるほど、売れ残りや廃棄のリスクも高まります。
一方、家具のような耐久性のある商品は、すぐに販売できなくても、短期間で販売できなくなるわけではありません。そのため、卸売業者や独立販売代理店を介する、比較的長い流通チャネルにも適しています。
事前に市場調査を行い、同業他社の事例も参考にしましょう。需要に対応できる生産体制や供給能力があるかを確認しておくことも重要です。注文量に対応できず、取引先との契約を打ち切られるような事態は避けなければなりません。
収益性を確認する
各流通チャネルで商品を販売した場合に、どの程度の利益を確保できるかを確認しましょう。
消費者への直接販売では、商品を希望小売価格で販売できるため、一般的に利益率が高くなります。一方、小売業者は、商品を再販売して利益を得る必要があるため、希望小売価格よりも低い価格での仕入れを求めます。
商品ごとの利益率を計算し、流通パートナーにどの程度の卸売マージンを提示できるかを検討しましょう。たとえば、消費者へ直接販売した場合でも利益率が30%しかない商品では、希望小売価格を下回る単価で大量に仕入れる卸売業者との取引は、十分な利益を確保できない可能性があります。
💡 ヒント:Shopify POSには、複数の店舗、オンラインストア、倉庫の在庫を一元管理するための機能が備わっています。需要予測や在庫減少アラートの設定、発注書の作成、売れ筋商品や滞留在庫の把握、棚卸しなどに活用できます。
競合他社の流通戦略を分析する
競合他社の流通戦略を調べることで、顧客がどのチャネルを利用して商品を購入しているかを把握できます。
たとえば、主な競合3社が次の流通チャネルで販売しているとします。
- 競合A:消費者への直接販売(オンライン・実店舗)、卸売、小売業者
- 競合B:消費者への直接販売(オンラインのみ)、小売業者
- 競合C:消費者への直接販売(オンライン・実店舗)のみ
3社すべてが消費者への直接販売を行っており、そのうち2社は実店舗でも商品を販売しています。顧客がブランドから直接購入する傾向があると考えられるため、自社でも消費者への直接販売を流通戦略に取り入れる価値があるでしょう。
一方、卸売を行っているのは1社だけです。この競合は自社よりも知名度が高く、比較的低価格の商品を販売しています。現時点では十分な利益率を確保しにくいため、卸売販売を始めるのは適切でないかもしれません。ただし、将来的な選択肢として検討する価値はあります。
小売流通を改善するヒント
在庫を消費者の近くに配置する
消費者は、店舗で購入した商品をその場ですぐに受け取ることに慣れています。これは再販業者も同様で、仕入れた商品をできるだけ早く受け取りたいと考えています。在庫を早く販売できれば、売上を早期に回収でき、キャッシュフローの改善にもつながります。
ラストワンマイル配送を最適化することで、流通パートナーへの配送も迅速化できます。需要のある地域に在庫を分散して保管すれば、主要な顧客や販売先の近くに商品を確保できます。配送距離を短縮できるため、納期に対する期待に応えやすくなるだけでなく、配送コストや二酸化炭素排出量の削減にもつながります。
3PL事業者と提携する
小売流通の管理には多くの業務が伴います。なかでも大きな課題となるのが、在庫を適切に管理し、各流通チャネルの需要に対応できるだけの商品を確保することです。
物流業務を外部委託できる サードパーティロジスティクス(3PL)事業者と提携すれば、こうした負担を軽減できます。3PL事業者は、卸売業者や最終消費者、その他の再販業者からの注文に応じて、商品のピッキング、梱包、発送などを代行します。
注文フルフィルメントを外部委託することで、次のようなメリットが期待できます。
- 負担を抑えながら新しい市場へ進出できる
- 3PL事業者の知見を活用し、より適切な流通判断を下せる
- 倉庫の賃料や発送作業にかかる交通費など、運営コストを削減できる
流通戦略を定期的に見直す
流通ネットワークを拡大して市場への浸透を図ったら、新しい戦略が成果につながっているかを定期的に確認しましょう。
流通戦略を見直す際は、特に次の点を確認します。
- 在庫切れが頻繁に起きるチャネル: 再販業者から繰り返し再入荷を求められる場合は、在庫配分を見直し、その販売先により多くの商品を割り当てることを検討しましょう。
- 売上の大部分を占めるチャネル: 特定の流通チャネルに依存しすぎると、取引関係の悪化や商品の取り扱い終了、発注停止などが起きた場合に、売上へ大きな影響が及ぶ可能性があります。
- 販売率が低いチャネル: たとえば、卸売による売上が全体の3%にとどまり、大部分が実店舗から生じている場合は、卸売に時間や費用をかけ続けるべきか、成果の出ているチャネルに注力すべきかを検討しましょう。
OLIPOPの事例を見てみましょう。この消費財(CPG)飲料ブランドは、自社オンラインストアを通じて消費者に直接商品を販売しています。EC・デジタルプロダクト担当シニアマネージャーのMelanie Edwards氏は、「OLIPOPは、ブランドやビジュアル、商品を自社で管理することを重視する消費者直販ブランドです」と説明しています。
一方で、同ブランドはAmazonで商品を販売するほか、Target、Wegmans、Whole Foodsなどの実店舗を持つ小売業者とも提携し、販路を広げています。
こうしたチャネル展開の背景には、消費者の購買行動の多様化があります。Melanie氏は、「やがて、eコマースにも進出する必要があると気づきました。現在は多くの顧客がオンラインで買い物をしているため、ブランドとしてオムニチャネルに取り組むことは理にかなっていました」と語っています。
自社のターゲット顧客を分析し、どこで、どのように買い物をするのか、購入時に何を重視するのかを把握することが大切です。こうした情報をもとに、自社に適した小売流通チャネルを選びましょう。
Melanie Edwards氏(OLIPOP、EC・デジタルプロダクト担当シニアマネージャー)
流通の専門家を採用する
流通戦略の策定や運用は簡単ではありません。自社に適したチャネルを見極めるには知識と経験が必要であり、販売パートナーとの関係構築にも時間がかかります。多くの事業者にとって、時間は限られた資源です。
必要に応じて、流通の専門家を採用し、戦略の策定や運用を任せることも検討しましょう。主な業務には、次のようなものがあります。
- 各流通方法の成果を評価し、必要に応じて戦略を見直す
- 販売パートナーと定期的に連携し、より強固な関係を築く
- 在庫を管理し、各小売流通チャネルへ適切に配分する
自社に適した小売流通戦略を見つける
自社の商品に需要があり、利益を確保しながら顧客へ届けたいと考えていても、どの販売パートナーと提携し、どのように連携するかを決めるのは簡単ではありません。
ここまで紹介した方法を参考に、自社に適した小売流通戦略を検討しましょう。卸売業者を通じて販売する場合でも、消費者に直接販売する場合でも、利益率を十分に確認するとともに、顧客や販売パートナーとの良好な関係づくりを重視することが大切です。
販路を広げることだけを優先し、わずかな利益しか残らない条件ですべての在庫を販売することにならないよう注意しましょう。
小売流通に関するよくある質問
小売流通の例は?
小売流通とは、メーカーから仕入れた商品を消費者に届けるまでの仕組みです。たとえば、衣料品店がアパレルメーカーから衣類を仕入れ、店舗で消費者に販売するケースが挙げられます。
小売販売の主な4つの形態は?
- 実店舗販売: 百貨店、専門店、ディスカウントストアなど、実際の店舗で商品を販売する形態
- オンライン販売: ECサイトなど、インターネットを通じて商品やサービスを販売する形態
- 消費者への直接販売: 電話注文、訪問販売、通信販売などを通じて、企業が消費者に直接販売する形態
- マルチチャネル販売: 実店舗、オンラインストア、カタログ、モバイルアプリなど、複数の販売チャネルを組み合わせる形態
流通戦略の主な4つのタイプは?
- 大量流通:実店舗、カタログ、オンラインストアなど、幅広いチャネルを通じて商品を流通させる戦略
- 集中的流通:できるだけ多くの店舗や販売チャネルで商品を取り扱い、市場への浸透を図る戦略
- 選択的流通:販売先を厳選し、特定の店舗や販売業者を通じて商品を流通させる戦略
- 排他的流通:特定の小売業者や販売代理店に、一定の地域や市場で商品を販売する独占的な権利を与える戦略
小売業者の流通チャネルとは?
小売業者の流通チャネルとは、メーカーから消費者へ商品を届けるために、小売業者や卸売業者などが関わる仕組みです。実店舗、ECサイト、モバイルアプリなども流通チャネルに含まれます。
流通チャネルはサプライチェーンの重要な要素であり、商品がどのような経路で消費者に届くかを左右します。




